第82話 Tremorがゴイスー
「潮風って…4日目ともなるとベタベタして嫌いになれるわね」
ヒトミが長い髪に指を通してため息を吐く。
「最初は気持ちいいと思ったのにね…」
リーフはペタッとした髪を無造作に縛っていた。
「気持ち悪いニャ…」
ミゥが尻尾を
「湿った風が吹いてやがる…嵐になるぜ…」
船長がパイプを吹かしながら甲板にやってきた。
「さすがね」
リーフが興味無さそうにお愛想程度に褒めておく。
「海は遊び場じゃねぇ…アンタはオーナーだが、船上では俺の指示に従ってもらうぜ」
ビーチチェアに水着、サンオイルを塗って日差しを満喫している、3人の娘達。
「リーフ、あんたのクリームソーダ、バニラアイスじゃないの?」
「フフフ、
「ミゥはストロベリーソーダに
「アタシもパナッポにしようーっと」
ヒトミがクーラーボックスに手を伸ばす。
「話を聞けや!!」
船長が怒鳴る。
「うっさいのよ、酔いどれ船長、アンタは船長室で酔っ払ってなさいな、船は順調に走ってるっての、アンタが酔ってても大丈夫なのよ」
ヒトミが船長に怒鳴り返す。
「だから、嵐が来るんだよ!! お前等、その恰好で嵐を迎える気か?」
「雨が降ったら戻るわよ、嵐の中でクリームソーダ飲まないわよ」
しばし睨みあうヒトミと船長。
「船長~、バッカス船長~」
船員が船長を呼びに来た。
(ったく…なんて連中だ…)
しぶしぶ船長室に戻る船長、腹立たしくて、思わず酒瓶に手が伸びる。
酒瓶が3本ほど床に転がり始め…
「ウィック…気持ち悪い…」
フラフラと甲板に出て外の空気を吸い込み…飲んだ酒を海へリバースする。
「おぅぇえええー」
「アッチで吐け、酔いどれバカ船長!!」
ヒトミが船長の尻を蹴り飛ばす。
「バカ野郎、オマエ、酒は波に揺られて美味くなるんでぇ…てやんでぇ…おぅえ」
海に浮かぶ
「おいおい…やべぇモンおびき寄せちゃったよ俺…」
船乗りの間では人魚は不吉の前触れと言われ嫌われているのだ。
「おいおい…オジサン、コレいっぱい呼んじゃったよ…」
「ワシャー…ワシュワー」
奇怪な叫びをあげ牙を剥き出した鱗だらけの人面が海面からヌッと船長を睨んでいる。
「目が合っちゃってるよ…コレ…オジサンの
「責任取れよ…酔いどれ船長バッカスさんよ~」
リーフがバッカス船長の薄くなった髪を掴んで凄んでくる。
「イェッサー!!」
ビシッと敬礼するバッカス船長と船長の帽子を被ったミゥ。
「にゃっ!!」
「船員、全員集合!! これから人魚狩りを始めます!!」
「何狩りだって?」
ヒマを持て余していたベンケーが嬉しそうに甲板に向かった。
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