第80話 Shellがゴイスー

「デカい目玉ね~」

 ヒトミが目玉焼きを食べながらミゥの隣にヒョコッと顔を出す。

「目玉かにゃ?」

「目玉ね~」


 赤い目玉が船に併走して泳いでいる。

「デカいイカね~」

「イカなのかにゃ?」

「タコかもしれないわ」

「タコかにゃ?」

 茹で卵をゴンッとヒトミの額に叩きつけて殻を剥くリーフ。

「おっふ!! アンタね~人の頭で卵割らないでくれる!!」

「クラーケンじゃないの…襲われたら面倒ね~」

「クラーケン…アレが?」

「アレが…海洋無脊椎生物クラーケンよ」

「アッチは何かにゃ?」

 ミゥが反対側を指さす。

 ばかデカい触手がニュッと海面に突き出ている。

「……足ね…」

 ヒトミが呟く。

「足? 触手と書くんだから手なんじゃないのかしら?」

 リーフが首を傾げる。

「アンタ、イカの手って聞いたことある?」

「難しい問題ね…アレが足か手か…」

 で視線を戻すと、デカくて赤い目玉が目の前まで迫っていた。

「おや?」

 リーフが手に持っていた卵の殻、おもむろに赤い目玉にポイッと投げてみたEgg shell In the eye, The squid


 思えば不幸な事故だったいつも、いつも余計な事を…


「ンギャァァァァァァ」

 痛かったのか知らないがきっと刺さって痛かった、クラーケンが暴れ出した。


「なんだ?」

 揺れる船長室でベンケーが飲みかけの酒を溢した。

「嵐でござるか?」

「んな急に嵐がくるかい!! こちとら、40年船に乗ってるんだ、嵐の気配くらい解るっての!! ヒック」

 すでに出来上がっている船長を無視して甲板に出るクロウとベンケー。

「おいおい…なんじゃありゃ?」

 ベンケーが目を擦るそんなに飲んだかな俺?

「おお…まさしくクラーケンでござる」

「知ってるのか?」

「来るときも…いたでござる」

「なんで、そん時に始末しねぇんだよ!!」

「いや~おとなしかったでござるよ、手を出さない限り暴れないと聞いていたでござるが…」

「お前!! 滅茶苦茶、暴れてるじゃねぇか!! 何処のどいつがあんなのにチョッカイだすんだ!!」

 言い放ったベンケーの視線の先には、リーフとヒトミ…そしてミゥ…

(出したんかい…ちょっかい…)


「さて…困ったわ」

 リーフが腕組みして悩んでいる胸がまったく邪魔にならない

困ってる場合じゃないわよいや…困ってる場合なのだ!!」

「いやにゃーーーー」

 ミゥが、うねる触手を必死で避けるなんとなく苦手なようだ


「なにしてやがるんだ…あの3バカは」

 ベンケーが思わず舌打ちする。

「リーフ殿~ど~したでござるか~」

「目玉に殻が刺さったにゃー!!」

「なんのことだ?」

「目玉焼きに殻が入っていたのではござらんか?」

「……それで…あぁ、なるのか?」

 暴れるイカの足を指さすベンケー。

「あぁいうものに刀は意味ないでござるよ」

「う~ん…まぁアレだ、海の事は任せようぜ」

「ウィック…」

 フラフラ出てきた船長を指さすベンケー。

「任せんかい!! ヒック…」


(任せていいのでござろうか?)

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