最終章 導かれし者達編

第79話 Eyeballがゴイスー

 キャンプ野宿を退き払って、港へ向かう御一行。


「これを買ったのか~」

 ベンケーが驚くほど立派な船である。

「幾らしたのかしら?」

「教えない…思い出すと泣きたくなるから」

 リーフの目にうっすらと涙が浮かぶ。

 フルフルと下唇を噛んで堪えているのだ。

(この子、泣いてる?)

 ヒトミが黙ってリーフの肩に手を掛ける。

 リーフがゆっくり振り向き、目が合う2人…

んぎゃぁぁぁあなにゆえーーー

 無言でヒトミの心臓を指さす悔しくて…ついリーフ。

「にゃははははは」

 ミゥがヒトミを見て笑うヒトミの「んぎゃぁぁ」はツボ

「後悔は無いな?」

 薔薇母バラモがリーフに尋ねる。

「無いわ…けないわ!!」

 貯金通帳をバシッと薔薇母バラモに叩きつける。

「もう…中学生にも鼻で笑われそうよ、この残高…」

「急上昇…急降下じゃの~」

「大陸で、荒稼ぎしてノービジョンV字回復を目指すわ王都制圧を諦めていません!!」

 バンッと船を叩いて、薄い胸を張るいつものように

「この船は、その野望の新たな第一歩あっ、野望って言った!!」

「いっぽにゃー!!」

 ミゥが早速、船をガリガリしちゃう止められない本能

 リーフの目は涙で潤んでいる。

(悔しいのでござるな…)

 なかなか船に乗り込もうとしないリーフを、放っておいて、サッサと船に荷物を運び始めるヒトミとベンケー。

(気に留めないのでござるな…)

 黙って自分も荷物運びを手伝う。

 たぶん長旅であるよく知らないけど

 荷車で10台分の保存食やら飲み水やらが運び込まれる。

(向こうに着く頃には空になっているはず、帰りはアホほどお宝を積み込むのよ3バカの食事が3食カロリーフレンドになろうとも構わないという覚悟…)

 リーフが涙を堪えて船に乗り込む。

 蛍光紫のキャリーバックをカラカラ引っ張りながら、当然の顔で船長室へ向かう。

「えっ?オマエが船長室に?」

 ベンケーがリーフに尋ねる。

 船である。

 当然、船員もいれば…もちろん船長もいるわけだ。

 ミゥに至っては、船長の帽子を被っている始末。

「えらいのにゃ!!」

 ビシッとリーフに敬礼するミゥ色々間違って覚えた


 なんだかんだで、船長室に、クロウ・ベンケー・船長・航海士。

 来賓室にリーフ・ヒトミ・ミゥ・薔薇母バラモ

 船員室にその他と相成ったのである。


 出航は定刻を大幅に過ぎた…

 部屋割りに時間が掛かったのである主にリーフとヒトミの言い争う時間


 夕日に向かって出航と行きたかったのであるが…

 月夜の出航となってしまった。


「夜逃げみたいね」

 ヒトミが甲板でビールを流し込む。

「にゃはははは」

 ミゥが船ではしゃいで走り回る。

「なんにゃ?これ?」

「それにさわるなー」

 船員も大変である。

 長期航海というだけで大変なのに…オーナーが、この連中である。


「静かな波だ…こんな夜は気を付けねばいかん」

 船長室でパイプを吹かす船長

「何に気を付けるんだ?」

 ベンケーが船長に尋ねる。

「なに…伝説だよ…静かな月夜に巨大な赤い目…船を引きずり込む怪物…クラーケン」


「なんにゃアレ?」

 ミゥが甲板から身を乗り出して見ているもの…

 デカくて赤い目玉であった。

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