第78話 Bondsがゴイスー

「審判?」

「ハデスの身体を器としてジャッジするつもりでいた…まぁ…疑似的な国を造っておったようじゃが、あの辺りで見切りをつけたのだろうて、元は『造魔ゾーマ』に与えられた役割を果たしただけだろう…だから何もせずに消えたのじゃ、その気なら、あのままハデスの身体を憑代よりしろにできた」

憑代よりしろ?」

「バラバラになったなら都合がいい…魔力を帯びた肉を憑代よりしろに何体かの霊体をコチラに呼べた」

「残り香…を辿ったってのは、そういうことか」

「あぁ…じゃが『死怒』は、おらんかった…」

「これ以上…見る物はないということか?」

「そんなとこじゃろう」

 スッとベンケーが立ち上がる。

「で…オマエはリーフを『造魔ゾーマ』の元へ送り届ける案内人ってわけか」

 構えるベンケー。

「いや…リーフには意思がある、自身の意思で選んだのじゃ」

「嬢ちゃんだって、知らなければ選びはしなかったさ!!」

 唸りを上げて薔薇母バラモの顔面目掛けて放ったベンケーの拳が空を切る。

「ククク…知らなければ…か…思い出すさ…全て知っているのだからな、全てをな…」

「早いか遅いかの差だとでも言いたいのか?」

「いや、自分で思い出すよりいいと思うがの~他人のせいにできるじゃろ」

「嬢ちゃんは、そこまで弱かねぇよ!!」

 ベンケーの回し蹴りが薔薇母バラモを捉える。

 ガシッと片手で事なげに止めてみせる薔薇母バラモ

「一応、身重じゃ…労わってもらいたいものじゃが…」

 クルッと手を返してベンケーをひっくり返す。

「嫌なら、此処に残ればよかろう、お前達が付いていく必要などないのじゃぞ」

 ひっくり返されたままベンケーは地面を拳で叩いた。

「身の程を知ったか? 人間」

 改めて『人間』などと呼ばれると、目の前の女性が『人』ではないと思い知る。

 そして己の無力さをも…知ってしまう。


(嬢ちゃん…1人でも問題ねぇのかもな…)

 薔薇母バラモがいれば、自分など…


 それでも…


 1週間が過ぎた…

 王都の近所で、1週間のキャンプという名の野宿であった。

「キャンプと野宿は似て非なるものよね」

 湖面で歯を磨くヒトミが王都を眺めながら恨めし気に呟く。

「くぁ~」

 ミゥが大きなアクビをして目を覚ます。


「さて…今日の夕方には出航よ」

 リーフが髪の寝癖を直しながら皆に伝える。


「よう…嬢ちゃん…」

 ベンケーが思いつめた顔でリーフに何かを言いかけた。

「行くわよ!!」

 言葉を遮る様にリーフがベンケーに手を差し伸べる。

「ん…」

 弱く握り返したベンケーの手にギュッと押し付けられた硬い物。

「あっ?」

「特別な子には『ベロターズ・オリジナル』よ」

 ニコッと笑うリーフ。


「私は独りにならない・・・アンタ達は、私を独りにはしない…」

 ささやくように呟くリーフ。

なんだってよく聞こえなかった?」

 聞き返すベンケーの尻を蹴るリーフであったなんとなく照れ隠し


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