第77話 Graveがゴイスー

「こんなもんね…」

 ヒトミがバカにしたように心の底から偽りない気持ちバケツを覗く。

 大きなバケツに魚が4匹小さめな

「今度は上手に焼くにゃ」

 ミゥが真剣な目で魚を見ている。

 先ほど黒焦げになった魚をゴリゴリと薔薇母バラモが食っている。

「まぁ…コレはこれでの…苦味が通好みということなのかの」

 これまで食ったことが無い食感を愉しんでいるようであった。


「嬢ちゃん、ちょっと…外すぜ」

「あそ…」

 素っ気ない返事で送り出す食後のリーフ。

(銭湯はあったかしら?)

 王都に銭湯があるか真剣に調べていた。


 ベンケーが向かったのはハデスの墓。

 何かを供えるわけでもなく、ただ何となく気が向いたのだ。

 墓の前にドカッと座り

「ハデス、俺…海に出る…帰って来られるかも解らねェ、バカだからよ嬢ちゃんの話なんか何も解らねェ、だけどヤバイことだってのは解るんだ」

 ポケットウイスキーをグイッと飲んで、少し黙る。

「危ないと解ってれば充分じゃ」

 振り向けば薔薇母がフワフワ浮いている。

「この苦味が…の…」

 黒焦げの魚咥えたまま器用に喋る。

「いつからいた?」

「ずっとじゃ、『死怒』の霊気を辿っただけじゃがの」

「はっ…どうだか…」

「無駄足じゃ…残りカスだけじゃの…ココは」

「兄弟の首しか埋まってねぇよ」

「そうか…時に御前、『死怒』が、どう見えた?」

「あぁ…悪魔みてぇな顔で笑いながら消えてった…それだけだ」

「悪魔…邪悪な面妖ということか」

「慈愛に満ちた顔じゃなかったぜ」

「やはり…人を許さぬか…」

「どういうことだ?」

「アレは悪魔などではない」

「アレも神様だってんだろ…わかっているさ」

「神…そんなもんがいるかどうか、わらわも知らぬ」

「お前さんは神様なんだろ」

「いや…神を求めた連中が造った模造品なのじゃろうな」

「偽物か」

「それすら解らぬ…なにせ本物など誰も知らぬのだ」

「いいじゃねぇか…ハデスはハデス…『死怒』は『死怒』…それだけで…それ以外の何者でもねぇよ」

ぬしぬしか…わらわわらわ…」

「そういうことだ」

 ベンケーが薔薇母バラモにウイスキーを差し出す。

「そう単純に考えられぬヤツもおる…『造魔ゾーマ』は『神』を気取るつもりらしい」

「嬢ちゃんは…何者だ?」

「リーフか…アレは『造魔ゾーマ』が造った最初の『人』じゃ」

「なんのために?」

「自ら『神』の座に座るため、それを崇める民を必要としている…人が最も増えやすい亜人種は数が少ないか…知性が足らぬ」

「嬢ちゃん独りで何ができるんだい?」

「リーフは…『造魔ゾーマ』の器じゃ、人に育てさせたのは、今を知るために他ならない…最も効率の良い世界を想像するために…『死怒』は審判した、結果『人』は不要だと」

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