第75話 Large Ship がゴイスー

「つまり…子供を産む気なのね」

 聞いて無いようで…要所要所は聞いていたリーフが薔薇母バラモに尋ねた。

(聞いてたんか~い!!)

 ベンケーが心でツッコミを入れた口に出すと面倒くさいから

「産む…それが約定だ」

 薔薇母バラモは真剣な顔でリーフの問いに答える。

「生まれる子は…クロウの子なの?」

「どういうこと? クロウの子じゃないって…まさか、別の人の子供ってこと!!」

 ヒトミがリーフを驚いた表情で見る。

「人の子なら…マシよね…薔薇母バラモ

 何か言いたげな顔で薔薇母バラモを見ているリーフ。

「リーフ殿…どういう意味でござるか?」

「妖狐として生きてるのよ…アンタの大事な『しずか』は…面影は残ってるけどね、産んでから返す? その辺りが引っかかるのよ」

「言ったであろう、『しずか』の病は進行性…子を産むまでは持たぬぞ、ゆえにわらわに身体を委ねておる…自我は眠らせたままでな」

「興味…じゃないの?」

 リーフがニタッと笑う。

「否定はせぬよ…強い妖気を秘めた人の子、リーフ、御前が霊子と魔力を混合させた存在ならば、この子は妖気を宿した半妖となる…」

「半妖?」

「計算された御前と違い、自然発生する半妖…いかなるように育つか興味はある」

「アンタら神を名乗る連中は好奇心旺盛なのね」

「創造主に似たのであろう…彼らも、我らを好奇心だけで造ったのだからな」

 愉快そうに薔薇母バラモが微笑む。

(皮肉ね…人が造った神様が人を使って遊んでいるなんて…)


 完全に無言を貫くベンケー。

(まったく話が見えない…)

 ベンケーの頭では理解の外も外…

(狐がクロウの女で子を産むから?……いったい誰が、なぜ困るんだ?)


 とりえず気になるのはリーフが、あぁいった表情をするときは、大概ロクな事を考えていない時である、と…ベンケーは知っている。

(嬢ちゃん…悪い顔で笑っているぜ)


「にゃはははははは」

(こっちは良い顔で笑っているが…何が楽しいんだろう?)

 妖狐のふわふわ尻尾が、たまらなく楽しいミゥであった。


 各々、思う所はあるものの…腹に一物秘めたまま微妙な空気のまま王都『ラージサムタクスクソ高い税金』に戻ったのである。


「船でございますか?」

「そう…大陸を渡るための船を買いたいの」

 リーフとヒトミが港で交渉中である。

「当然、船乗りも雇うから…おいくら万円?」

「左様でございますか…お待ちください…早急にということであれば…」


 貯金は綺麗に無くなった。

「いい、大陸に渡ったら金目の物を積み込むわよ!! ビックリするくらい貯金額が減ったわ…というか無一文と言われても言い返せないほどにね」

「船って高いのよ~」

 ヒトミが他人事のように笑う。

「笑ってる場合じゃねぇんで

ぐぎゃあぁぁあ八つ当たりの呪い発動

「貿易よ!! 安く仕入れて高く売る。しばらく魔王で荒稼ぎは気楽な商売は休業です」


 どうやらリーフにとって魔王討伐は気楽な稼ぎだったらしい…

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