第73話 Farewellがゴイスー

(薔薇母バラモは、なんのために『しずか』の身体を…)

 大人しく従うことになったとはいえ、クロウは薔薇母バラモを信用してはいなかった。

(嬢ちゃんが素直に従うとはね~)

 ベンケーはリーフが珍しく初めてかも他人の指示に素直に従うなど考えてもいなかった。

(さっぱり何を話しているのか解らなかったわ…)

 解らな過ぎて、疑問すら抱かないヒトミ。

「にゃははは」

 なぜか狐に懐く猫…狐は犬科なのだが…問題はないようだ。


「リーフ、船を用意してもらうわよ」

 薔薇母バラモがシレッと、とんでもないことを言いだした。

「…………なに?」

 リーフの目が点になる。


 この、いちいち珍しい光景に3バカは戸惑っているのだ。

(こんな、この人リーフ見たことない…)

 すでに王都へ向かって帰路の途中である。

「船…船…船かぁ~」

 ブツブツ呟きながら歩くリーフ。

 竜王とハデスの賞金をつぎ込んでMoney ALL IN!!、なんとかなりそうな金額なのである。

 そこまでして知りたいのか?

 そう考えると、そうでもないような気もするし、『造魔ゾーマなる存在なんか親的な?を知ったからには見てみたいような気もするし…

(困ったわ)

 王都を囲うように土地を買占め、外堀から埋めていって一気に中央をするつもりでいたリーフにとって武力行使を辞さない構え、まさかの船とは予想の斜め上過ぎる出費なのである。

 うんうん唸りながら歩くリーフを無視して薔薇母バラモクロウに近づくふわふわ浮いて移動している

「時に…九郎義経、汝は、この女を追って来たのであろう?」

「左様」

 目を合わせぬまま歩くクロウの横で寝そべる様に浮いたまま移動する薔薇母バラモ

わらわには、性別など無いのでな、解らぬが…まぁ器の影響は受けぬでもないようじゃ、『しずか』の影響も大きく受けてはいるのじゃぞ」

「そうか…」

「不満そうじゃな」

「……なぜ…『しずか』の身体を器に?」

 クロウは真横に浮かぶ薔薇母バラモにキツイ視線を向ける。

「怖い目じゃの~」

 クロウの視線を面白がるように見返す薔薇母バラモ、からかう様に言葉を続ける。

「九郎義経、主はわらわが『しずか』の身体を奪ったと思うておらぬか?」

「なに?」

「やはりそうか・・・なるほどの~」

 意味深な顔つきでクロウを眺める。

「話しておくかの…結論から言えば『しずか』は自ら器になったのじゃぞ」

「バカな!!」


 聴かないような振りで、しっかり聞いている俄然、興味深々ヒトミとベンケー。

「病じゃ…『静』は病に侵されておった、本人も長くないことを知っていたのじゃ…ゆえに主の隣で生きることを選んだのじゃ」

(マジか~)

 ヒトミとベンケーが下を向き、驚きの表情を隠そうとしている。

「嘘でござろう…」

「本当じゃ、わらわの封印を解いたのも偶然ではない、」

「その思いに従ったとでも言うつもりか?」

 クロウの目に怒りが宿る。

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