第70話 Rewardがゴイスー

「いやぁぁああぁー」

 庭を縦横無尽に逃げ回るヒトミ、運動能力は流石である。

 ワサワサワサワサ…

 追いかける牛鬼…をシタタタタタッと追いかけるミゥ。

「もう面白いようにしか見えないのよね…」

「ミゥ殿が楽しそうでござるからな」

「いやいや…姉ちゃんはよく動くわ…感心しちゃうね俺」


 もはや観客と化しているリーフ達。

「うわぁぁぁぁぁー」

 ヒトミが我を忘れてダガーを抜いた。

 なんか握ったとき生暖かい感じがしたがサブナックの目玉、深くは考えないように努めた。

 滅茶苦茶に振り回し牛鬼に突っ込んでいく。

「にゃ?」

 なんか嫌な予感虫の知らせでもしたのか、ミゥがリーフの所へ戻ってきた。

 ザクッ…ザクッ…目を閉じている割には、かなりの深手を負わせるヒトミ。

 切り裂いた傷口がウジュウジュと腐りただれ、肉が剥がれ落ちる。

「ぶもぉぉお……」

 牛鬼の動きが止まる。

「はぁ…はぁ……はぁ?」

 呼吸の荒いヒトミが首を傾げる。

(思った感じと違う…)

 そう、ヒトミの手応えは『切り裂いた』であるが…牛鬼の傷口は腐り落ちていた。

「なんじゃアレ?」

 ベンケーが牛鬼を指さす。

「アレが…ライオン丸サブナックからの、ご褒美ってヤツじゃないのかしら?」

「腐食の効果でござるか…」

「おそらく…だけどね…」


 牛鬼の蜘蛛足がサワサワ動く

「キモいーーーー」

 ヒトミがダガーで切り落としていく、綺麗に8本、ソレが瞬時に傷口から腐敗していく。

「このダガーもキモいーーーー」

 自らの手に生暖かくピトッとフィットする感じが寄り添うように、また気持ち悪い。

「なんか叫んでるわね」

「アレでござるな…ダガーに高性能+腐食高嫌悪+目玉みたいな感じでござろう」

「そうか、仕事は出来るけどキモい上司みたいな感じか~」

「面白いことになったわね~」

 ニタニタ笑うリーフヒトミの不幸は蜜の味


 身体がグズグズと崩れ出す牛鬼

「ぶもぉぉおぉぉ」

 切なく鳴く牛の顔…

 頭の中に『ドナドナ』が流れてくるヒトミ悪いことをしたような気持ち


「どうして…どうして? 牛の顔したモンスターばっかなの?」

 とりあえず、薔薇母バラモさん家の庭で、軽く食事を始めちゃった御一行。

「謎だよな? ミノタウロスも牛頭だし」

 ベンケーも頷く。

「アレよ、要はくっつきやすいのよ、牛って…なぜかは知らないけど」

 リーフがシレッとカロリーフレンドバランス栄養固形食をボソボソ食べながら答える。

「くっつく?」

 ヒトミが顔をしかめる。

「そう、こう切って張るみたいな感じ、あのね厄災後の生物にはね、ボンド系とアマルガム系がいるの、キメラはボンド系で…ミゥはアマルガム系なわけよ」

「はい?」

「だから~牛鬼もね、切って張ったボンド系の…」

「いや…なんの話? なんでそんなことを?」

 ヒトミがリーフを不思議そうな顔で見ている。

「……なんでだろう…ね…なんのことなのかしら?」

 リーフの目は小刻みにカタカタと痙攣していた。


「ククク…教えてしんぜようか?」

 古城の中から歩いてきたのは白い着物姿の薔薇母バラモであった。

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