第67話 Pentagramがゴイスー

 草原に味噌鍋がぶちまけられている…所々に肉やら魚の頭が転がり散らばる。

 キャンプファイヤーを中心に夜間戦闘を終えて、肩で息する御一行。

「こういうこともあるのね…」

 リーフが額の汗をグイッと拭ってゴクゴクッと『ほっこりスエット』をラッパ飲みした。

「合わせ技みたいなもんね…」

 ヒトミが手を地面に付いてゼーゼーと荒い息をしている。

「思えば不幸な事故でござった…」

 クロウが『薄緑うすみどり』を鞘に納刀、チンッと闇夜に涼しげな音が響く…


 少し時間を遡る…

 火を囲んでの楽しい夕食

「燃え上がる炎を見ていると…イフリートと契約した夜もう思い出が尋常じゃないを思い出すわ…」

滅多に聞かない思い出話しね魔法使いあるあるかしら?

 ヒトミがリーフの呟きに答える現在、小骨をピンセットで抜き取り中

「五芒星に炎を放って…召喚魔法を唱える…贄をベながら」

 なにやら小声でブツブツ呟くリーフなんか終わった恋を思い出しているような目

「出でよ…贄の身体に宿り、我に試練と力を与えたもう!!」

 リーフが立ち上がり、ライオンの頭キメラの頭部をキャンプファイヤーに蹴り込んだ。

「にゃ? ミゥの頭にゃーおもちゃ

 ライオンの頭を玉乗りの要領で転がしながら運んできたミゥが悲しそうな顔をする。

「ミゥ…あれは玩具じゃないのよ…食べれない場所は焼却処理基準が食糧になるか、ならないかが一番なの」

 ヒトミがミゥの頭をポンポンと慰めるように叩く。

「食えそうにはねぇな…」

 ベンケーが、おもむろに竜王の杖で炎の中のライオンヘッドを突く。

「止めなさいよ!! アタシの杖で」

 遠い目をして月を眺めるクロウ賞金首になった『静』に思い馳せている

 味噌鍋はすでに冷めている。

 クロウをドンッと押し退け、ベンケーの手から竜王の杖を取り上げた瞬間。

 悲劇が幕を開けたのだった。


 ゴォウッ!!

 キャンプファイヤーが、とんでもねぇ高さに炎を立ち上らせた。

「なに?」

 ヒトミが呑気に缶ビールをプシュッと開けた。

「熱いにゃー」

 ミゥの尻尾が火の粉で焦げた。

「ムッ…」

 思い出の世界から帰還したクロウが『薄緑うすみどり』に手を伸ばす。

「試練と…力を欲するなら我に、その資格を示してみよ…我はサブナック…50の軍勢を率いる侯爵である!!」

 炎の中でライオンヘッドが喋っている。

「熱くないのかしら?」

 ヒトミがビールをクピッと飲んで飲み残しをライオンヘッドへバシャッと掛ける。

「ほう…やる気だな?」

 ライオンヘッドが宙に浮き、鎧をまとった屈強な肉体が生えてくる。

「なんか…キモいわ…」

 リーフが顔をしかめる。

「ほう…それは俺に対する挑戦だな」

 ベンケーがローブを脱ぎ、ミチッと筋肉を鳴らし対抗する。

「我を倒してみせよ…されば力を与えん!!」

『地獄の侯爵 魔人サブナック』召喚しちまったのである。


「ライオンの頭を蹴り込んだのがイケなかったのよ!!」

「アンタ達が五芒星で組木なんかするからじゃないの!!」


 リーフとヒトミが言い争う最中、サブナックの剣を、独り捌いているクロウであった。

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