第66話 Bonfireがゴイスー

「頭は冷えただろ?」

 ベンケーがニヤッと笑う。

「あん?」

 眉間のシワが深くなる寝起きが悪いリーフ。

「テメェのおかげで、拭くだけ水入らずタオル言うほどサッパリしないが全滅じゃボケ脳筋!!」

「嬢ちゃん…昨夜のイカれっぷりは、おめぇ…あぁでもしなきゃ…なぁ?」

「えっ…グボッ」

 歯磨き中に、突然、同意を求められたクロウ、思わず歯ブラシを口の奥に突っ込んでしまうほどの動揺、泡が血で赤く染まるほど差しこんでしまった。

 ジローっとリーフが睨んでいる。

(痛い…口の中も、リーフ殿の視線も…)

「まぁまぁ、しょうがないわよ昨夜のアンタリーフは普通じゃ~なかったわよ」

 軽くポンポンとリーフの肩を叩く。


「なによー!!」

「にゃによー、にゃはっはは」

 憤慨しながら薔薇母バラモが住まう居城を目指すリーフ。

(マズイでござる…)

 何やら機嫌の悪いリーフを見ているとクロウの心に不安が影を落とす。

 先頭を歩くヒトミとクロウ、背中越しに感じるプレッシャー立ち止まっただけで火球が飛んできそう、発信源はリーフである。

 隣をシタシタ楽しげに歩くミゥ。

 後方のベンケーが羨ましい。

(このまま、『しずか』と相対したら…考えるまでもない考えたくない


「なんかー、迷ったみたい」

 KY空気読まないヒトミが、よせばいいのに大声で…

「あん?」

 ボフッ!!

 ヒトミの足元で火球が破裂する。

「おふっ!!」

 紙一重で空中に飛び退くヒトミ。

 リーフの眉間にシワがメリッと深く刻まれる。

「迷っただぁー?」

 もはや、ヤ〇ザと遜色ないレベルのリーフ。

「迷ったにゃー」

 ミゥが嬉しそうに万歳する。


 結局、見晴らしのいい丘でキャンプとなった御一行。

 移動は相変わらず迷走するのだが無駄に迷ったぶん、野宿の手際は良くなる一方。

 もはやキャンプファイヤーの組木など職人レベルである。

「今回は五芒星で組んだぜ、嬢ちゃん」

 ベンケーが得意気に腕を組んで組木の前にズンッと立つ。

「苦労したわ…ホント…途中で、何でコレ作ってんだろう? って病みかけたわ」

「なんで…作ったんでござろうな?」

 横に並んだ3人が揃って首を傾げる。

「お星にゃ」

「まぁじゃあ…とりあえず点火の『カー』!!」

 ボワッと炎が夕闇にオレンジを添える。

 王都『ラージサムタクスクソ高い税金の意』で保存食を買うついでに買った、生鮮食材若干腐りかけを、とりあえず焼く…煮る…してみる火を通せばイケるかもという願い

「イケるわ」

 ヒトミの毒見ミゥではアテにならないが終わり、味噌風味の鍋クロウ作「闇鍋」とリーフとミゥが首を傾げながら焼いた魚やら肉やらベンケーが適当にさばいた食材の数々、が紙皿に大雑把に盛られる。

「キャンプらしいっちゃぁ…そうなんだが…」

 ベンケーが微妙な不満感を口に出す見た目に反して食の見た目に細かいベンケー

「こんなもんよ、大丈夫イケるわ」

 リーフが味噌スープをズズッと、すする様に飲む見た目に反して食に寛容なリーフ

「ハフハフ…フーフー…アグアグ…」

 何でも冷まして、何でも食べる雑食性ミゥやはり猫舌、甘いとか辛いとか…基本味覚が美味い

「骨が…面倒くさいわ…小骨って何の為に存在してるのかしら?」

 基本は肉派、風邪をひいた記憶が無いヒトミナントカは風邪をひかない、魚は骨が無ければ嫌いじゃない

「…………」

 食事中は無口、出された物は完食するクロウ食にも「美」を求めるお国柄、人それを「躾」と呼ぶ


(明日には…辿りつけるのだろうか…)

 味噌鍋を持ったまま、月を不安気に眺めるクロウであった。

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