再び三章断裂 ヒトミの過去編

第64話 Dreamがゴイスー

「寝ぼけている間に…そんなことが言うほどのことではない…」

「そんなことにゃ…」

 リーフが大袈裟に驚いてみせるもちろん演技

 ミゥがリーフの真似をするシマヘビ飽きた

 クロウとヒトミが器用に胴体山羊を解体している。

「山羊肉は臭みがね、下地処理がキモなのよ…クロウ、香草探してくれない?」

「香草でござるか…このあたりに生えてるか…明日、探してみるでござる」

 器用な2人を満足気に見ているリーフ

「クロウ…間違っても、アンタ達が用を足した場所からは取ってこないでね…来たら燃やすわよ…その刀ごと」

 語尾の脅しはハッタリではない…リーフの顔を見るまでも無く確認の必要なし、声で解る、解るようになった。

(きっと、笑顔でござる…)

(たぶん笑っているわ…)


『ワシも? 燃やされるの危険物だけど?』

 妖刀『薄緑うすみどり』は、初めて恐怖を感じていた物心ついて幾百年で

「天然危険物」妖刀 薄緑…付喪神つくもがみとなって数年意外と若い、いよいよ引き籠り鞘から出たくないが重傷化していくのである。

 偉そうだが人格『翁』…単に人見知り?性格『内気』なのかもしれない。


「しかし…器用でござるなヒトミ殿」

「まぁね~、何でも出来ないと生きてけなかったからね…」

 山羊の肉を摘まんだまま、グイッと額の汗を拭い遠い目をするヒトミ。

 拭いた汗の代わりに山羊の血がベトッと額に付いている。

(美人だけに猟奇的な画でござるな…)


「小さい頃ね…」

 ヒトミの両親は至って普通の商人であった。

 ヒトミは荷台に積荷と一緒に揺られながら街へ行商へ向かう道中が大好きであった。

 ゴトゴト揺られて、仲の良い両親の会話を聞きながらコクリ…コクリ…と居眠りをする春…悲劇は起きた。

 食糧を奪いに盗賊に襲われたのだ。

 積荷を根こそぎ奪い去る盗賊の集団、両親の命を奪わなかっただけ良心的な連中であったといえる。

 のだが…不運な事に、積荷と一緒に奪われちゃったのがヒトミ本人であった。

 明るい月夜に盗賊は出ない…暗くて解らなかったのだ。

 盗む側は忙しいのである。

 起きたら盗賊に囲まれていた…幼い子供だったヒトミは、とりあえず笑ったとっさの防衛行動

 さすが商人の娘である、愛想は良い。


 今さら、お返しするわけにもいかず…良く笑い、良く食べるヒトミを盗賊の頭は、立派に育て上げたのである。

 意外に生真面目な盗賊集団、ヒトミが、しっかり盗賊として独り立ちするまで、基礎から叩きこみ、何処へ出しても恥ずかしくない盗賊として育て上げた。

 旅立ちの日には、涙を堪えて

「おい…ヒトミ、風邪ひくなよ」

 お頭の言葉に

「おーかーしら…クソお世話になりました」

 ブワッと溢れる涙。

「さびしいぞー」

 結局、涙の別れとなって早や5年…


「おい、オマエ、オールカラーって知ってるか? 世界中の宝石が採掘できる奇跡の山脈だ」

 子供のような目で夢を語るヒトミ

誰がオマエ私をオマエ呼ばわり?…誰に向かって口聞いてんの大賢者リーフ様よ

「ぐぎゃぁぁあぁー」

 調子に乗って胸を指さされる日々に至っているのである…南無

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