第63話 Goatがゴイスー

「羊の胴体の意味は?」

 ヒトミがクロウに尋ねた。

「あれは山羊でござる」

「じゃあ、山羊の胴体って何の役に立つのかしら?」

「拙者に問われても…乳が出るとかでござろうか?」

「なら牛で良くない?」

「クセがありそうでござるからな…山羊の乳は」

「そうよ、ジンギスカンもクセが強いじゃない」

「だから羊ではなく山羊でござる…」

「どう違うのかしら?」

「……天パが羊で…直毛が羊でござる」

「……見比べないと解らないわ…で、どうして胴体が山羊なのかしら?」

「いや…まぁ…羊も山羊も…目は怖いでござるが…」

「いや頭部はライオンだからね、百獣の王だからね、胴体の貧弱さが異常に気持ち悪いわ…アタシ」

「まぁ…バランスは悪いでござるな」


 ライオンの頭…解る

 蛇の尾…理解できる

 山羊の胴体…謎?


 見れば見るほど…謎は深まるばかりである。

「ふにゃー!!」

 再びミゥが蛇の尻尾に飛びかかる。

 ユラユラが神経を逆なでするようだ。

「シャーッ」

「ミギャー」

 蛇VS猫は放っておくとして…

 ライオンの頭部は明らかに怒っている。

 山羊の胴体が地面を蹴って走ってくる…そして…転ぶ…

「明らかに頭が重いのよね…」

「頭からいったでござるな…」

「グルァァァァ」

「自分で転んで怒るって…もう八つ当たりも甚だしいわなぜかリーフの顔が浮かぶ

 ヒトミは、言うが早いといった身の熟しで、あっという間にキメラとの距離を詰める。

「やっぱ…胴体山羊よね、どう見ても!!」

 ヒトミの両手のダガーが容赦なくキメラの胴体山羊を切り刻む。

「グガァァァァ」

 怒っているとも、苦痛に耐えているとも取れるうめき声をあげてヒトミのほうへ威嚇するように顔をライオン向ける。

「余所見している場合ではないのではないか?」

 クロウがライオンの後頭部に、『薄緑うすみどり』を突き立てた抜刀済み

 頭部ライオンが沈黙…下を出してガクンと項垂れる。

 頭部に重心が傾き、胴体が持ち上がり、蛇が鎌首を持ち上げる。

「なんか変な体勢ね…」

 ヒトミがボソッと呟く

 臀部が持ち上がり、頭部を引きずるように動くキメラ、もはやメインは蛇に移行云わば補助脳しているらしい。

 ミゥの玩具と化している蛇と山羊では…推して知るべし。

「シマヘビじゃない?」

 目が覚めたリーフがツカツカと近寄り、シャッと蛇の頭部を掴む田舎の山育ち、蛇ごとき恐れない

「毒蛇じゃないんだ…ただの蛇なんだ…ただの…普通の…コブラとか、せめてマムシとかであれ!!」

 なんだか可哀想になってきたヒトミ。

「もう充分でござる…」

 ヌルッとライオンから『薄緑うすみどり』を抜き、シャンッと山羊に向ける。

 やや前のめりに構えて胴体を斬り裂こうとググッと力を溜める。

 一閃…

 ドサッと横に倒れたキメラ…

 残されたのは、シマヘビ一匹であったミゥがしっかり握っていた

「んにゃ…」

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