唐突にミウの過去編

第56話 Foster parentsがゴイスー

「で…どうやって帰るのかしら?」

 リーフが崖の前で上を見つめる遠い目で

(まさか?)

 ヒトミの顔に緊張が走る。

「お空を飛べばいいのにゃー」

 ミゥが高~くジャンプとんでもねぇ高さではあるする。

(なんでこの子は飛ぼうとするのかしら?)

 ヒトミが不思議そうにミゥを見る。

「嬢ちゃん…どうやって登るんだ?」

 ベンケーがリーフに尋ねた。

「先に聞いたのは私よ、質問を質問で返さないでくれない? しかも聞き返してくるとはね、呆れてモノも言えないわ」

 リーフが大きなため息を吐き…

いい案があれば遠慮なく言ってちょうだい民主主義と思わせて独善的なリーフのスタンス

 そしてジーッとヒトミを見る。

(ハッ? 見られているわ…迷惑!!)

 ハデスより…謎の煙の顔より…今はリーフの視線が恐ろしいもしかしたらなんとかするかもという期待

 そっとリーフの方を振り返るヒトミ…

(見てるわ!! 恐ろしいほどに…穴を空けられそうなくらい実際、やろうと思えば造作も無い)

「飛ぶのにゃ、お空をブワサッと飛ぶのにゃ~、お母さんのように」

「ブワサッ? お母さん?」

 リーフがヒトミから視線をミゥに移す。

(なにかしら…動悸が退いて行く…)

 ヒトミが謎の不整脈から解放された瞬間…リーフの興味はミゥに移っていた。


「ミゥ、お母さんはどこに?」

 リーフが『オーク燻製』を差し出してミゥの興味を惹く。

「にゃ? ミゥのお母さん…お空を飛ぶんにゃ」


 ミゥが幼き頃、ミゥの両親はハンターに捕まっている。

 まだ子供だったミゥだけを両親はそっと逃がした…。

 そもそも、人間なんかに捕まるような種族ではないのだが、なんか騙されやすいというか、身体能力に反比例して性格がおっとりしているというか…捕まったのも、実際、しばらく輸送されている途中に、アレ…コレなんか違うな?

 と感じたのだ。

 普通に逃げようと思えば簡単なのだが、いや簡単ゆえに軽い気持ちでミゥを先に逃がしたのだ。

「みゃう…」

 ミゥが崖から落ちた先…それが飛竜ワイバーンの巣であったことは不幸中の幸いというか…珍事の最中の奇跡であった。

 飛竜ワイバーンにとって、誰よりも早く孵っちゃった落ちてきただけ雛を飛竜ワイバーンは一生懸命に育てた。

 やたらとよく食い、やたらと跳ねる子供ミゥを…


 いつしか他の雛も孵り…飛び立ち、独り立ちの巣立ち日を迎えても最初に孵った雛は飛び立たなかった猫寄りの人科だから


 頑張って飛ばせようと必死な飛竜ワイバーン本能DNAに飛ぶが刷り込まれてない生き物にとって飛ぶという行為は非常にハードルが高い。

 反面、飛ぶことが前提で産まれてくる生き物は呼吸するように飛び立つのである。

 スパルタ教育というのは酷であろう…

 お母さんワイバーンは、ポンッと巣から我が子猫の子放り投げた。くちばしで摘まんでポイッ

「みゃぁぁぁぁあー」


 崖下まで響く断末魔…シタッと着地した場所が盗賊のアジトであった…。


 そのまま盗賊に育てられたというか、便利に使われていたというか…

 王都にアジトを移してからも、ミゥは飛ぶ練習を欠かさなかった。

「オマエは猫なんだよ」

 ソコは理解したようだが、

 飛べないという現実は理解し難いようで物心ついた頃から周りは飛んでいたから

「猫は、お空を飛べるにゃー!!」


 そして…ベンケーの上に落ちてきたわけである。

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