第53話 Conceitがゴイスー

 阿吽の呼吸とでも言うのだろうか、繰り返される戦いを経て、リーフ達は、それぞれの役目を理解している。

 ミゥとヒトミが牽制と先制攻撃を仕掛け、クロウが飛び込む、ベンケーが仕掛ける頃には、ミゥとヒトミが2撃目を放つ。

 相手の体が崩れたところで、リーフの魔法が容赦なく放たれる。

 瞬殺のパターンではあるのだが…

 さすがに『大神官ハデス』高額の賞金首魔王クラスとなると瞬殺というわけにはいかない。

 ベンケーの拳を受け止めたハデスが不敵に笑う。

「こんなものだろうな…人間では…」

「あん? 人間では?」

 両の拳を押さえられたままベンケーが苦悶の表情で聞き返す。

「俺の身体はすでに…すでに破壊神『死怒』の器として捧げてある」

「うつわ?」

「実態を持たぬ神を実体化させるには、器が必要なのだよ」

「信者を生贄にする必要はねぇじゃねぇか…」

「必要なのだよ、神を呼び込むための通り道は迷いやすいのさ…迷わせない様にエサを巻いていおく必要があるのさ…」

「エサ…かい?」

「生餌だ…ミミズでよく魚を釣っただろ? 子供の頃」

「あぁ…よく怒られたな…大神官様に」

「無駄な殺生はするな…」

「あぁ…俺もオマエハデスも出来の悪い僧侶だったからな」

「無駄な殺生なんてないよな…あの夜…あの村で殺された連中は無駄ではなかったと言うのだ…大神官様は」

 ハデスの形相が怒りで歪む、同時にベンケーの拳を更に強い力で締め付ける。


「あの夜…俺は…俺はー!!」

 ハデスの周囲に魔力の障壁が立ち上る。


 あの夜、村の惨劇を見たハデスは、大神官の元へ戻り怒りの感情のままに責めるように尋ねた。

「なぜ…村を見捨てたのか?」

 寺院には盗賊の襲撃から逃れた、1人の少女が保護されていた。

 すぐに助けに行く、それも出来たはずなのだ。

「すぐに行けば、助かる命もあったはず」

「代わりに奪われた命もあったはず…」

 大神官はハデスを諌めた。

 その夜、戦える僧兵の数は少なかった。

 未熟な子供を襲撃の場に送り込むことを避けたのだ。

 単純に秤にかけて、傾いた方をとっただけだ。


 その理屈を理解できなかった当時のハデスは怒りの感情のままに師である大神官を手に掛けた。


「行けば救えた…」

 それが奢りであると大神官は知っていた。

 群を抜いた才を持ち、それを過信し始めていた当時のハデスが行けば、ハデス自身も無事では済まないと思ったのだ。

 大神官は秤に掛けた、ハデス1人と村人数十人の命を…


 ハデスの才は寺院の宝だった…


 歪んだ愛情だったのかもしれない。

 それがハデス自身をいびつゆがませた…としたら…


 ガオンッ!!

 障壁に火球がぶつかり爆ぜる。

昔話に興味は無いホントに無い!!!!」

 リーフが竜王の杖を構えて凛と立つなんか主人公っぽく…ね♪

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