第47話 Insightがゴイスー

 神殿の中は想像以上に広く、それ自体が街のように機能しているようだ。

 門を通れば、商店街が右側、居住区が左側と整然と区画整理されている。

ヤツハデスらしい…」

 ベンケーが舌打ちする。

「なんか…好きになれない…」

 綺麗な街、建物はグレーに統一され、個性というか人間味をまるで感じない。

 ヒトミは、その顔は嫌悪感を露わにしている。

 もともと感情がまんま顔に出るタイプ正直すぎて損するタイプ、シーフのくせになのだ。

「べつにいいじゃない…住むわけじゃないんだし…それに…ぶっ壊しに来たんだし」

 ギョッとしてリーフを見るクロウ。

「なによ…違うの?」

「いや…そうでござるが…いや…違う様な気も…」

 周囲を見回せば、白い飾り気のないローブを羽織って笑いかけてくる住民(信者)、平和な街というイメージではるのだが、何か違和感というか、コレじゃない感を感じているのは事実。

 それでも幸せに暮らしているであろう、この街の真ん中を歩き、平然と「ぶっ壊す」と言い放つリーフにもナニカを感じずにはいられないクロウ。

 ハデスのことだって、ベンケーの話を聞いた手前、今一つ乗り気ではないのに、個人的に縁もゆかりも無い人々の生活を「ぶっ壊し」に来ちゃっているのである。

(賞金首とはいえな~)


 足取りは重い…

 沈んだ気持ちのまま街を抜け、今、ハデスが、お住まいであろう立派に禍々しいどこか悪趣味神殿に入っちゃったわけである。


「何人くらい住んでいるんだろ?」

 ヒトミが街の方を眺めながら考えている。

「現在300人ほどが居住区で生活しています」

「うぉっ!!」

 足音もさせずにヒトミのすぐ後ろに立っていたシーフのクセに背後を取られるマヌケ男が答えた。

ハデスです自己紹介…」

(いつの間に…)

 リーフも驚いたが、それ以上にベンケーが言葉を失っていた。

ハデス解っている…」

「ベンジャミン…久しぶりだ」

 スッと手を差し出すハデス。

「ふざけるな、握手するような仲じゃないだろ」

 手を払い退けようとするベンケーの右手首をグッと掴み返すハデス。

「ふざけているのはどっちだ?」

 先ほどの笑顔は失せ、脅すような表情に変わる。

「他人様の庭にズカズカと入り込み…何をするつもりだ、ベンジャミン」

「……」

 睨み返していたベンケーが目を逸らしたやましいことがある

 それに気づいたガンくれて勝ったハデスの顔が笑顔に戻り、強く掴んでいた手をパッと放す。

「まぁ…飽きるまで居たらいい…部屋を用意してやってくれ…大切な私の旧友と…その連れだ」

 神官達に言い残しハデスは、そのまま奥へ下がって行った。

「余裕ね」

 ハデスを呼び止めるようにリーフが声をあげる。

「余裕?」

「私を、その他大勢と決めつけたわねベンジャミンの連れじゃない、ベンジャミンが連れだ後悔するわよそのために来た

「フフ…ベンジャミン…キミの連れは…やはりキミとよく似ているようだ…傲慢で、己をだと信じて疑わない」

 ハッと何かに気付くミゥ。

 ガサゴソとリーフに買ってもらった小さなリュックサックを漁り始める。

「にゃっ」

 ハデスに差し出した誇らしげにベロターズオリジナル特別な存在に与えられる


「……フフフ…ホントに面白い連れのようだちょっと侮れないと額に汗が……」

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