第43話 Agreementがゴイスー

「これで解ったわ…ゴーストがあれだけ湧いて出てきた理由…」

 リーフが感情無く話した。

「酷い…」

 ヒトミが口を手で覆った。

「臭いにゃ…嫌だニャ…」

 ミゥがリーフの後ろに隠れる。


 小高い丘の上から見える惨状…

 それなりの村が1つ焼き払われていた。

「焦げ臭い…まだ日は経っていないようでござるな」

「昨日のゴースト、その元凶だぜ…」

 ベンケーが口に込み上げ、溜まった唾を吐き捨てた。

「クソ!! 汚ぇ手段を取りやがって…」

 土を蹴って、やりどころの無い怒りを露わにするベンケー。


「どういうことよ」

 ヒトミがリーフに尋ねる。

「この村を襲って…人をゴーストに変えたヤツがいるってことよ」

 フイッとヒトミの視線を逸らして村に向かって歩いて行くリーフ。

「昨夜のってこと?」

「でござろうな…」

 クロウがリーフの後に続いた。

「行くのかにゃ? 行きたくないにゃ…」

 ヒトミの横でしゃがみこむミゥの頭を撫でて歩き出すヒトミ。

 ベンケーが無言で最後尾から付いて行く。


「クッ…」

 思わず目を背けたくなる光景、村の広場には死体が山に積まれている。

 周囲に文様が描かれている。

「ここに集めて…ってことかい!!」

 焦げた柱を思いっきり殴りつけるベンケー。

「ハデス…でござるか?」

 あえて声にしたクロウ、その言葉にベンケーの身体がビクッと揺れた。

「警告でしょうね…」

「警告? なんで? 殺す気だったんじゃないってこと?」

「殺す気ならゴーストだけで襲わせないわよ…」

 ゴーストで弱らせてから襲わせるのが定石、ゴーストだけでなんて足止め以外、考えられないのだ。


 文様を消し、リーフが火で弔った。

 唱えた『エン』以前より力が籠っていたように感じた。


(ハデス…本当に闇に染まったのか…)


「ベンケー殿…」

 クロウがベンケーを気に掛ける。

「あぁ…覚悟は出来たよ…俺がハデスを止める…」

「そうね…竜王とは違って、ハデスは倒さなきゃならない存在みたいね」

(竜王だって充分、倒すべき存在なんだけど…)

 ヒトミは言いかけて言葉を飲みこんだまた呪いが発動しそうだから


「痛っ…」

 リーフが右腕を押さえた。

「どうした嬢ちゃん?」

「なんでもない…」


 リーフの右腕に走る痛み。

 それは契約違反の警告である。

『自身のためだけに使う魔法』

 先ほど放った『エン』は村人の弔いのために唱えた魔法…


(まったく面倒くさい…)

 気性の荒い『イフリート』には許容できなかったらしい。

「忘れるるな…そなたの魔法に助力してやっているのは契約だということを…」

 リーフの頭にイフリートの声が響く。

(いつまでもデカい顔できると思わない事ね…近いうちに契約など破棄して服従させてやるから…)

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