第40話 Liquorがゴイスー

「クロウ~、ま~だ掛かるんかい?」

 リーフの後ろ、大荷物を背負い歩く大男ベンケー、疲れたというより飽きてきたのほうが疲れを誘ったようだ。

 いかんせん、魔物はおろか、スライム1匹出てきやしない、のどかな草原を遠足気分で歩いて4時間、ヒマすぎて疲れてきた。

「嬢ちゃ~ん、今日は早めに野宿としようや、なぁ?」

「はぁ~仕方ないわね…」

 オマエベンケーのせいだ、といった顔で草原に腰を下ろしたリーフだが、なにより退屈で死にそうだったのだ。

 それが証拠に、いつになく誰よりも野営キャンプの準備の余念がない。

「マシュマロ焼くのよ、今夜は♪」

 とても魔王を狩りに行く者のテンションではない。

 なんならキャンプのついでに魔王を討伐しにいくようなノリであるリーフとミゥ

「マシマロ食べるのにゃー」

「猫舌じゃないのかしら…この子」

 ヒトミが心配する、飼い主リーフから預かっている強大な戦力ローコストに怪我などさせたら、殺される…呪いでギャー

「ミゥ、ふぅふぅして食べるのよ、

「ましまろガブッといくのにゃー」

「いかないで頂戴~」


 ヒトミの心配を他所に、すでに魔王討伐を果たした冒険者賞金稼ぎである。

 手慣れた手際無駄な野宿日数でキャンプの準備は整っていく。


 早めに準備に取り掛かったこともあり、日が沈む頃にはキャンプファイヤーに火が灯される。

「キャンプファイヤー♪は~じまるよー!! 『カー』」

「にゃー!!」

 リーフの『カー』が四角く組まれた組木の中心に放たれ、ゴォッと音を立て燃え盛る。

「いや~いつみても…最初から宴もたけなわクライマックス的な燃え方でござるな…」

 夕闇にほとばしる火柱が見晴らしのいい草原をオレンジに染める。

「いや~魔王討伐に出ていることなど忘れそうな静かな夜ね~」

 異国ジパングの酒をクロウと飲んだヒトミが上機嫌でキャンプファイヤーから1人離れていく。

「ウボォ…ウェェェエ…」

 数歩歩いたら…酔いが回って草原でリバースしちゃってるヒトミ。

「それにしても静かな夜ね…逆に不気味なくらい…」

 1人静かに三日月を眺め遠い目をするヒトミの口元は汚物でキラキラと光っている。

「何かでそうかい?」

「いいえ…もう何も出ないわ全部吐いたから

 誰かに話しかけられたヒトミが思わず答えて…しばしの沈黙……

「誰?」

 クルッと振り返るとソコには…

「ンギャァァァァァー」

 全速力で走って戻ってきたヒトミ狂ったように早い足、戻して戻ってきた


「うるさいわ…」

 リーフが舌打ちする、手には串に刺した鶏肉が握られている。

「出たーーーー」

「何? 便秘だったの?」

「出たのよーーー」

 リーフの背中に隠れるように回り込むヒトミ体裁きは流石、盗賊である

「出たわ」

「何が? アンタ…酸っぱ臭いわよ…やめて貰いそう…うぇ…」

 貰うタイプのリーフが細く長い足でヒトミをググッと蹴り剥がそうとする。

「出たのよゴーストよ!!」

「はぁ?」

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