まさかの2章中断 ベンケーの過去編

第38話 Seniorがゴイスー

「ハゴン…俺の2つ先輩だったんだ…」

「なんと?」

「同門ってのか…兄弟子というのか、同じ師のもとで武術を学んでいた…」

「そうでござったか…」

「嬢ちゃんが、コレとか言って見せて来たとき驚いたぜ」

「いきなり、魔王賞金首でござるからな…」

「まぁ…俺も破門同然で飛び出したんだ、今更、ハゴンを責める気にもならんし…るぶんには迷いはないんだけどな」

 ベンケーの表情からは、とても迷いが無いなどという言葉は信じられないすごく解りやすく迷っている

「出来るなら避けたい…そんなとこでござるか?ベンケー殿」

「まぁ…避けられそうにもないけどな、あの嬢ちゃんに話そうにも、耳も貸さないだろうしな大当たりである

「えっ? だから?」

 そんな顔のリーフが容易に想像できるクロウ。

「丁度いいじゃない、弱点とか弱みくらい知ってるんでしょ、これは幸運よ」

 何か、いい笑顔のリーフを想像しちゃったベンケー。

(血塗られた道…いや、そんな恰好いいもんじゃねぇか)

「腐れ縁を断ち切る、いい機会なのかもしれねぇ」

「ベンケー殿…その御仁魔王ハゴンと何かあったでござるな…」

「つまらんことさ…今となってはな…」

「そうでござるか…ならば、拙者あえて聞かぬでござる」

「……えっ?」

「ん?」

「聞かねぇの? 聞く流れじゃねぇの?」

「……いや…話したければ…どうぞでござる…」

「いや…そう言われるとさ、なんかこう…話し難いというかさ…」


 互いに顔を見合わせるベンケーとクロウ。

 気まずい空気の中、どちらからともなく、コーヒー牛乳を手に取っていた。


「俺が初めて、あの寺院に預けられた日…」

 唐突に話し始めたベンケー。

(おおう…きたでござるな…)

 ちょっとコーヒー牛乳を口から瓶に逆流させちゃったクロウ。


 そうベンケーことベンジャミン・Kが8歳の頃、住んでいた村が盗賊の襲撃に遭い、孤児になったのだ。

 身を寄せるところなど、どこにもないベンジャミンは食べ物を恵んでくれそうな寺院に身を寄せた。

 生憎と魔法の能力は資質に恵まれなかったが、体格に恵まれ体術は同年代では飛びぬけていた。

 同じ時期に入門した子供達では相手にならなかったベンジャミンの相手をしていたのが、2年早く入門したハゴンであった。

 ハゴンは魔術の才に富み、体術でも群を抜いて優秀な僧兵モンクであった。

 ベンジャミンはハゴンには1度も勝てないまま月日は流れ12年、ベンジャミンも一端の僧兵モンクとなっていた。

ある夜…盗賊の襲撃を受けた村に派遣されたハゴンとベンジャミン。

「ベンジャミン…オマエ神を信じるか?」

 月を眺めながらハゴンはベンジャミンに尋ねた。

「今は信じられない…」

 ベンジャミンの目の前には、盗賊に襲われ殺された何体もの死体が転がる。

「俺は…自らの神を探し出す」

 寺院に戻ったハゴンは師を殺め…姿を消した。


 翌日、高僧からベンジャミンにハゴン討伐の命が下されたが…ベンジャミンは断り、寺院を出たのであった。

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