第二章 悪霊の神々編

第37話 Crabがゴイスー

 王都『ラージサムタクスクソ高い税金』に戻った御一行様。

「とりあえずオツカレサマー」

 宿に泊まってカニパーティの真っ最中である。

 意外と酒に強いミゥと飲みそうで飲めないヒトミ、もはや酔っているのかすら定かでないベンケー、静かに盃を重ねるクロウ。

「未成年は飲めないの」

 リーフはシナモンスティックをクルクル回して紅茶を飲んでいる。

 1人だけ宴会のノリではない絶対いる空気を読まない人

 素魔法音スマフォンをシレシレ~と眺めている。

(次はどれにしようかなっと…)

 傷癒えぬ仲間クロウのことの事など気にも留めずに次を魔王探すリーフ、修羅道まっしぐらである。

「コレどうかしら?」

 カニの足を鼻に刺して踊るベンケーの動きが止まる。

「……大神官ハゴン……」

 いつになく真面目な顔になる鼻にカニの足は刺さったままベンケー。

「いや?」

 リーフが紅茶をズズッと、すすりながらベンケーをチラッと見る。

「いや…というか…なんというか…」

 ベンケーの顔色が悪いカニのせい?

「なに?吐くの?カニにあたったの?食べ過ぎ?」

 ヒトミがカニの殻を捨てる容器を急いでベンケーに手渡す。

 静かに盃を重ねて…知らぬ間に寝ているクロウ火傷多数に肋骨にヒビ…

 酒に酔ったのか座敷の畳をバリバリしているミゥ。

「いや…なんでもねぇ…いいんじゃねぇか」

 ぶっきらぼうに答えて、部屋を出て行くカニは鼻に刺さったまま

 襖をバシッと閉めてタオルを肩に掛けていたあたりしつこいようだが鼻にカニの足が刺さったまま風呂に行ったのであろう。

「クロウ!! アンタ、ベンケーの様子見てらっしゃい」

 リーフが寝ていたクロウを起こす。

「んん…風呂でござるか? 拙者、火傷ゆえ遠慮したいのでござるが?」

「火傷に効くのよ、ここの温泉、行きなさい!!」

「解ったでござる」

 しぶしぶ出て行くクロウ。

「リーフ…アタシが行こうか?」

 ヒトミは気を利かせたつもりでなのであろうが…残念ながら混浴は無かったのである。

 無言で首を振るリーフ、かじろうと思っていたシナモンスティックをクロウに投げつけて起こしたため、無くしてしまい、少し後悔していたミゥが隅でかじっていた

(なんにゃコレ?)


「リーフ殿…効能に火傷とは書いてないでござる…」

 温泉の脱衣所で浴衣のまま身体中包帯だらけ腕組みして温泉の効能を読み返すクロウ、2度確認したが火傷とは書いていなかった。

「おう…風呂か?」

 温泉から上がってきたベンケーが腰にタオルを巻いたまま出てきた。

(全身、包帯の拙者に風呂か?)

「いや…様子が気になってな…」

「ん?俺のか?」

「あぁ…」

「嬢ちゃんに頼まれたか?」

 ベンケーが『フルーツ牛乳』をキュポッと蓋を取ってグイッと飲む。

「風呂上りはコレが一番だぜ、なぁ」

 スッとクロウにも1本差し出す。

(拙者…風呂には入ってないのだが…)


 長椅子に座って、扇風機を自分の前に向けるベンケー。

「ハゴンか…」

 似合わない遠い目で天井を眺めるベンケー。

 生臭いと思ったらゴミ箱にはカニの足が捨ててあった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る