第34話 True colorsがゴイスー

 目の前で変貌を遂げている竜王に気付いているのか、いないのか?

 リーフは修羅の形相のままよほど頭に来た?詠唱をブツブツと続けている頭部ダメージは竜王の方が甚大

「変身などさせるかよ!!」

 メイスを振りかぶり、黒い妖気に包まれている竜王に向かって突進するベンケー、勢いそのままにメイスを竜王の横っ面に叩きこむ。

 バシンッ、その直前で弾かれるようにメイスが反発し戻される。

「グッ…」

 反動で肩を痛め、メイスを落とすベンケー。

「クククッ…大人しく見ておれ、お前等を冥府へ送るであろう、魔王の姿を…」

 薄目で笑う竜王、その身体が鱗に覆われ、ビクンッ…ビクンッと脈打つたびに巨大になっていく。

「大きくなってしまったにゃ…」

 ナニカに絶望おそらくは身長したミゥがガクンとひざまずく。

「コレが…竜の王…」

 ヒトミの声が震えている。

 黒い妖気が晴れていく…そこに立っているのは、黒い鱗に覆われた巨大な竜推定6m

 真っ赤な目玉が、クロウを捉える。

「まずは死に損ないにトドメをくれてやろうか…王たる者の慈悲じゃ」

 大きく裂けた口から発する低い声が王の間に響く。

 その巨大な身体を支える2本の脚、右足がグイッと持ち上がり、クロウを踏みつぶさんと体重を乗せて降ってくる。

「いかん!! ソプロション!!」

 一瞬早く、ベンケーの『ソプロション全身ヌルヌル』がクロウを包み、竜王の大きな脚から滑り抜ける…がダメージを軽減したに過ぎない。

 クロウは部屋の壁まで滑りヌルヌルッと隅で転がったまま動かない。

「動かれるだけで…迷惑な大きさだわ…」

 広い王の間が狭く感じるほど巨大な体躯、そして放たれる威圧感は、まさに王たる風格を存分に醸し出している。

外のアレウォータードラゴンと随分違わねぇか?アレ」

 ベンケーがクロウを担ぎながら、逃げ回る。

知性の差オツムの良し悪しかしら?」

 器用に体を入れ替え、ダガーで竜王を攻撃してはいるヒトミ、だが鱗を剥ぐ程度でダメージには程遠い。

 鱗に覆われていない腹や尻尾の内側を蹴ったり裂いたり、ミゥの素早さならではのヒットアンドウェイだけが地味にダメージHP999に10ダメージ刻んでいた。

「チッ!! だからクロウから…ってわけか…」剣撃が一番効果ありそうな感じがしたベンケー

「なにが竜の王よ」

 フンッと巨竜の前に立ちふさがるリーフ。

「なにか言ったか?」

 ミゥとヒトミを大きな手で払い退けていた竜王の目がギロッと足元で無い胸を張りだすリーフを睨む。

「この杖…よさそうね…くれる?」

 転がったままの竜王の杖を長い足で器用に拾い上げるお行儀は悪い、御育ちが…リーフ。

「生きて出られれば…くれてやろう…」

「そう…もちろん生きて帰るわよ少なくとも自分だけは

 大きく裂けた口が愉悦に歪む竜王、それに負けないくらいの悪魔の笑みを浮かべるリーフ。

(どっちも怖ぇな…おい…)

 部屋の隅で、クロウに『キズバン癒し呪文』を掛けているベンケー。

「ベンケー!! バカ竜の脚にデリロション!!」

「ヒトミ後ろから右目を!!」

「ミゥ、左目を…潰してしまいなさい!!」

 リーフの高い声が響く

「クロウ!! 動けるわね」

 ジロッとクロウを睨むリーフ反論は認めない

「もちろんでござる」

 ヨロッと立ち上がるクロウ、その手には『薄緑うすみどり

「命を賭けて、斬り裂きなさい!!」

「応!!」

 ググッと身体に力を込めるクロウ

「させるか!!」

 竜王が駈けだした…

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