第28話 Petがゴイスー

「どう? 使えそうなモノあった?」

 ベンケーは、スプリガンのメイスを持っていくようだ。

 ヒトミはダガーを数本とレイピアを、そしてクロウ…

「拙者コレを…」

 クロウが差し出したのは、奇妙に湾曲している刀剣

「ショーテル…使えるの?」

 ヒトミがクロウに尋ねる。

「さて…解らぬが、この形状、日本刀とは異なりつつ切り裂くという点では共通のナニカを感じるでござる」

 2振りを背中にクロスさせて背負う。

「ミゥは? なにか持ってくの?」

 ガサゴソと隅っこで何か漁っているミゥにリーフが声を掛ける。

「んにゃ?」

「なるほど」

 一同納得のビキニアーマー防御力皆無姿であった。

「動きやすいにゃ」

(亜人にして武闘家…攻撃力は申し分なし、武器は爪、そしてビキニアーマー…武闘着ではなく…ビキニアーマー…そこだけ女戦士枠なのね)

 リーフがコクリと頷いた。

(本人がいいならOK防御しそうにないし)

 各々、適当な装備主に盗品に身を包み、なんかソレっぽくなったRPG風の空気感

 部屋の片隅にあった三角木馬には誰も触れなかったのは、ココがなんの部屋かを考えるのが怖かったからだ。


「では最後の部屋、開けて頂戴クロウ」

「うむ…では…」

 バンッと扉を開けると…

「見なかったことにするでござる…」

 チラッと見た一同は無言で頷いた。

お洋服コスプレがいっぱいあったにゃー」

 ミゥだけは興味津々で再び開けたいと爪でガリガリしていたが、ヒトミに引っ張られ、しぶしぶ先を急いだのであった。なにせ火事だし…


 緩やかにカーブしている階段を上ると玉座の間に着いた。

「なるほど」

 リーフが最もだと頷く。

 玉座には誰も居ない。

「よく考えれば、わざわざ玉座に座って待っている魔王ってのもね」

「まぁ、いつくるか解らんし、なんなら宝だけ持って帰ってもいいわけだしな」

「で…番犬ってわけね」

 ヒトミが納得したという顔で呟き頷く。

「笑顔咲く~ふんふんふふふーふんふふん♪隣も顔、アナタは~番犬オルトロス♪」

 リーフが鼻歌まじりに歌いだす。

「グガァァァァァー」

 オルトロスの2つの首が咆哮をあげる。

「しぎゃぁぁぁぁー」

 負けじとミゥが毛を逆立て吠える。

「ギャアァァァァー」

 ヒトミが絶叫する。

「魔犬も飼われりゃ番犬まで落ちるもんね、かる~くひねってキャンッ言わしたりなさいクロウ!!」

「なんと?!!」

 まさかの単独御指名に驚きを隠せないクロウ。

 クロウを残して3歩下がる仲間達。

 改めて見ると…

(犬の大きさじゃないでござる…)体長6m 目玉はボーリング玉よりデカイ

「さすが魔王ともなると飼っている犬も違うわね」

 リーフが感心している。

 いつかは私も、なんて思っているわけで、とりたて慌てる素振りは無い。

 だだっ広い広間にクソデカい双首の魔犬オルトロス

(ブリーダーから買うのかしら?)

「魔犬のトップブリーダー?」

「何ブツブツ言ってんだ嬢ちゃん」

 ベンケーが親指でクイッと「見ろ」と促す。

 両手にショーテルを構え、単独オルトロスと奮戦しているクロウ。

「劣勢ね…」

 ヒトミが見たままの状況を的確に判断し呟いた。

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