第25話 Roomがゴイスー

 外は大火事、中は?

 通路で狂ったような笑い声、ときおり猫の鳴き声が聴こえる、他人の家魔王の城他人の部屋妖精の部屋

 中では短気な御仁スプリガンが鬼の形相で睨んでいる。

「いや~、見事な財宝だなコリャ…おい…」

 ベンケーは涼しい顔で怒気をシラーッと受け流している。

 決して広くは無い部屋、そこに剥き出しの金品が無造作に転がっている。

「羽振りよさそうじゃねぇかー、おいよぉー」

 ベンケーがニタ~と笑う。

「愚かな…ワシの宝じゃないわい」

「魔王様の、お宝かい、ソレ全部」

「もちろんじゃ、ワシはただの番人でな」

「ククク…欲が無いねェ」

「ワシは宝を護ることが使命でな」

「じゃあ、全部アタシに献上なさいな」

 ズイッと部屋のドアから顔を出すリーフ。

「よこすのにゃー」

 とミゥ。

「嬢ちゃん、ソッチカメレオンは終わったのかい?」

あんなもんカメレオン、スライム引っぺがして、血でも流せばデカいトカゲよ、手こずるようなモンじゃないのよ言う割には呪文連発したけど

「つかぬことを伺うが?」

 クロウがリーフに『まさかとは思うけど…』といった顔で尋ねた。

「ヒトミ殿は?」

「………忘れてないわよ思い出せなかっただけ

 リーフは屈んで、ミゥに耳打ちした。

「合点にゃ」

 ミゥが廊下に戻って、しばらくして戻ってきた。

「大丈夫にゃ、引きずりだしたにゃ」

「お利口さんね、はいベロターズオリジナル3個よ」

「にゃー♪」

「無事でござるかー!! ヒトミ殿ー!!」

「ぎりぎりー、ホントぎりぎりよー」

 ヒトミが廊下から返事を返した心なしか涙声

ねっ、無事だった忘れてたけど

 ホントにギリギリだったのである。

 カメレオンの体内で、消化が先か、窒息が先かという最中、よく揺れるカメレオンの腹の中で気持ち悪くなっていた爬虫類酔い最中、きわきわの所にミゥの爪である。

 ガパンと開いた腹の中から胃液と一緒に体外へ奇跡の生還を遂げたのだ。

 現在、半裸で忍び装束をタオルの代わりにして、身体の胃液を拭っている真っ最中である。

(臭いし…気持ち悪い…湖が懐かしい…)

 半泣きではあるが、まぁ無事であるらしい。

「そーいうわけで、後は、ココのお宝を頂いて、縦割れ頭魔王 竜王を倒して、とりあえず土地を買うわアタシ城を建てるための土地

 グッと薄い胸の前で拳を握るリーフ。


「そりゃぁオメェ…まずはワシを倒さんと叶わん夢じゃのぅ」

 妄想から現実へ戻す、低い声…スプリガンが大型のメイスをポンと掌で弾くように構えた。

「使いもしないお宝の番人風情が大層な口を叩くじゃない、契約に縛られた妖精、憐れなものね、何で雇われたのかしら?」

「知りたいか? もちろんコレじゃ」

 スプリガンが懐から取り出したもの…

「にゃ♪」

「そういうこと…」

「そういうことじゃ」

 スプリガンがポンッと口にベロターズオリジナル特別な存在に与えられる飴を放りこむ。


(あの飴玉に、それほどの強制力が?)

 ベンケーは今更ながら、高級キャンディに恐れ戦いていた。

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