第21話 First floorがゴイスー

「おっじゃましま~す」

 リーフが大きな扉をバーンと開ける。

 ほこりが舞い、澱んだ空気が外に流れ出す。

「空気が変わったとは言えネェな~」

 それもそのはずである。

 庭の空気は腐敗臭と焦げた匂いで満たされているわけで、空気を入れ替えても、リフレッシュ感は皆無であろう。

 大広間に繋がる扉という扉からワラワラと湧いて出るリザードマン、中央の階段の上には魔術師が数人待ち構えている。

「歓迎されてないでござるな…」

「されるとでも思っていたの?」

 ヒトミがスラッとダガーを抜いて両手で構える。

 ベンケーがムキッと両腕の筋肉を御披露する。

「構えなさいよバカ!!」

 ヒトミがベンケーのふとももにバシッと蹴りをくれる。

「戦わずに済むのなら、それに越したことはない…さすが僧兵ともなると初手からして違うでござるな~」

「んなわけないじゃない!!」

 ヒトミが今度はクロウの尻を蹴る。

 3バカのやりとりは無視して、リーフは『コー』をリザードマンにぶちかましている、扉の前まで押し返すと、『サン』で一塊にして扉ごと塞いでしまった。

「ざまないわね、ホー!!」

 妙な奇声を上げてゲラゲラ笑うリーフ、およそ主人公とは思えない顔と卑怯なやりくちである。

 2階から魔術師ウィザードが『カー』を唱えて氷を溶かそうとするが、レベルが違いすぎるため、氷は溶ける様子もなく、ビキビキと音を立てて壁まで凍らせていく。

「嬢ちゃんの『カー』に比べると、奴らのは小さくないか?」

「当たり前じゃない、術者のレベルアタシ天才で威力が変わるものなのよ、オホホホホ」

 一般の魔法と違い、リーフは魔法に精霊の加護を加えている。

イーフリート上位の火の精霊』と契約しているのだ、そこら辺の魔王の下僕魔術師ウィザードごときが張り合えるレベルではない。

 ちなみに契約条件は『自分のため以外には魔法を行使しないわがままいっぱい、人助けなんてするわけない』という、およそ人道から外れた制約を設けている。

「ジ・ワールド、イズ、オールマイン!!」この世はすべて、ワタシのものよ!!

 他人様魔王様の玄関先で高笑いする美少女、容姿は美しく上の中か下中身は魔王と変わらないなんなら更に性質が悪い


 扉のひとつはリーフが氷漬けのトカゲ塞ぎ、反対側の扉から湧いて出たリザードマンとゴブリンはミゥが片づけた。

「まつんだニャー、ニャハハハハ」

 転がるゴブリンの丸い生首を追いかけて遊んでいる。

 3バカは正面の階段から2階へ上がり、魔術師ウィザードを火傷を負いながらもなんとか始末したところだ。

「なんで早めにロションをかけないのよバカ!!」

 紫のレオタードが所々焦げて露出が高くなったヒトミが怒鳴る。

「すっかり忘れていたぜ…それにな…そう魔法をポンポン唱えられると集中力と精神力が必要思ってもらっちゃぁ困るぜ…なぁ嬢ちゃん」

 手すりにアゴを乗っけて、下のリーフに同意を求めるベンケー。

「ん? なにが?」

「いや何でもねぇ…」

 上から眺める1階の惨状魔法による惨劇を見るに、化け物っているんだなと思う無限の魔力でももってるんかな?ベンケーであった。

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