第19話 Homecomingがゴイスー

「なんでござろう」

 手で拭って見てみると

「血でござるな…」

 上を見上げると、すっぽ~んと手から抜けてった妖刀がウォータードラゴンの喉にブッスリと刺さっている。

「刺さってるでござるな…」

 どうも喉元は鱗に覆われておらず、それほど硬くは無かったらしい。

 もがき…苦しんでいる様子が木の上から良く見えるヒトミ。

「怪我の功名ってヤツかしらね…奇跡のクリティカルヒットだわ」

「どうだ、俺の魔法ソプロションは!!」

 ベンケーが下で自慢げに叫んでいるが、とりあえず無視している。

 ウォータードラゴンの泣き所だったのか、無表情な爬虫類の王様ドラゴン種は湖へ戻って行く、撤退とはいえ、その巨体をくねらせるだけで、クロウにとっては充分に危機的状況ではある。

「拙者の刀を…刀を返すでござるー!!」

 とっとと逃げればいいようなものだが、クロウがそうできない理由が、刺さったままの妖刀である。

「返せって言ってるわよ…彼」

「そりゃオメェ、鞘だけ残ってもよー」

「でも、呪いの刀なんてないほうが良くない?」

「そこはアレだ腐っても鯛ってヤツじゃねぇか」

「呪ってきても、無いよりマシっての…そういうものかしら?」

「しょうがあんめい…日本刀なんて、この辺で簡単に手に入るものじゃねぇんだから…」

「どっちが珍しいのかしら、呪われた剣と異国の剣って…」

「そりゃ簡単だ、呪われた異国の剣だぜ、レア中のレアってことだ」

「なるほど」

 木の上と下で呑気に会話が弾む、ヒトミとベンケー。

「返すでござる!!」

 ウォータードラゴン、その巨体の周りで怒鳴りながら、うろちょろしているクロウ。


「なにしてんだか…」

 正門の前で鉄格子越しにワラワラ湧いてくるゾンビに『カー』を連発しているリーフ、ゾンビは鉄格子の隙間から手を伸ばすだけで、イージーモードではあるのだが、いかんせん数が多い。

 とはいえ、岸部の珍騒動を見ながらでも数を減らして卑怯な戦法を実行させたら右に出る者はいないいるあたりは、さすがである。

「にゃ…骨がふえてるにゃ?」

「どうしたのミゥ?」

「焦げた骨が増えてるにゃ」

 高い塀の上で庭の様子を見ているミゥが不思議そうな顔をしている。

「ゾンビだもん…焼けたらスケルトンになるわよ肉が無くなりゃ骨として動く

「そうなのかにゃ」

「見習ってほしいものね、死してなお、主のために尽くす…文字通り骨身を削ってね、あの生き様アンデッドだが…というか死に様をアンデッドだからアイツ達にも愉快な仲間達

(早くコッチに来てスケルトンの相手してくれないかしら…なんか面倒くさくなってきたわ)


 ウォータードラゴンが湖に戻っていった・・・

「うぉぉぉー!! 拙者の刀カ~ンバ~ック~」

 浅瀬で膝を付くクロウ、よく解らんが、背中が小刻みに震えているあたりから察するに泣いている?

 シュババッババァー!!

 湖面を滑るようにクロウに向かってまっしぐらに向かってくる妖しいオーラ視認できるほど

 バシッ!!

 間一髪、白刃とりで受け止めた妖刀…

「よくぞ戻ったー!!」


アレ妖刀殺そうとしてたんじゃねぇかなクロウのことを…殺る気満々?」

「でも喜んでるわよ彼…クロウ

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