第18話 Swordがゴイスー

 クロウが妖刀呪刀を一振りすると空を裂く斬撃が湖面を走る。

 ギイィン!!

 ウォータードラゴンの眼前で斬撃が弾け、その動きを止めた。

「マジか?」

 ベンケーがポカンと口を開けてクロウを見ている。

 グッタリとしているベンケーとヒトミ、その目がクロウに訴えている。

(後は任せていいんだよな)

(アタシ達もう限界なのよ)

 アイコンタクトで、2人の思い脅迫、しかと受け取ったクロウ

「ご安心召されぃ!! 倒せぬまでも、足止めくらいはしてみせるでござる!!」

(倒せないんだ…やっぱり)

 浅瀬から『飛燕』飛ぶ斬撃を連発するクロウ、足止めにはなっているようで、ウォータードラゴンが地味に嫌がっている。

 それでも追い返せるわけでもなく、徐々に距離が縮まってくる。

「おい、あの蛇、火とか吹かねぇよな?」

「知らないわ…湖面で生活してるんだから火は吹かないんじゃないかしら…」

「水から上がれないとか、そういう致命的な弱点はあるのか?」

「知らないわ…湖面で生活しているからといって上がれないとは限らないんじゃない…」


 その通りであった…

 浅瀬に巨体を擦りつけて上陸してきたウォータードラゴン

「おいーーーー!! 水の中より元気じゃねぇか!!」

 火なんか吹けなくても、その巨体と牙だけで充分な脅威である。

「うぉおぉー!! ターーーー!!」

 クロウが叫ぶ

「ウォーター…水? 喉が渇いたのかしら、この一面水だらけの場所で水を欲するなんて憐れなものね、アレかしら、ミネラルウォーター以外は受け付けないとかいういけすかない女みたいな感じなのかしら?」

 ダボダボの忍び装束がアホほど水を吸って重いやら動きにくいやら…もはや逃げることを諦め、早々に木の上に避難してクロウの奮戦を見守るヒトミ、枝に跨り、忍び装束を脱いで搾る、そのまま枝に干し始めた頃であった。

「せめて援護くらいはさせてもらうぜ!! ソプロション全身ヌルヌル!!」

 そのすぐ下で巨体を木にもたれかけながら、魔法を唱えるベンケー。


 クロウの全身がヌルヌルに包まれる。

「ん? またでござるか?」

 チラッとベンケーの方を見るクロウ、親指を突き立てグッと突き出すやることはやった、死ぬ気で頑張れベンケー。


「一刀両断!! 閻魔斬えんまざん!!」

 ウォータードラゴンの懐に飛び込んだクロウが高くかざした刀を一気に振り抜く。

 ジャオンッ!!

 硬い鱗を切り裂き、斬れた裂け目から少し遅れてゴポッと赤い血が流れ出す…はずだった。


 クロウの刀はヌルッと滑って、すっぽ~んと飛んで行ったのである。

「ぬぅ…無念…」


 開いた口が塞がらないヒトミ…

「ちょっと、どうすんのよ!!」

 木の下で腕を組んで「う~ん」と唸っているベンケーを怒鳴りつける。


 困った顔のクロウの首筋にポタッ…と生暖かいナニカが落ちてきた。


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