第16話 Baitがゴイスー

サン氷の飛礫が身体の自由を奪う当たると地味に痛いし、冷たいし


「地味ながら使える魔法なのよ」

 リーフがウインクする…誰にかは解らないけど。

「思う存分に殺っちゃってきなさいボーナスステージ突入ミゥ!!」

にゃ?……んにゃ…にゃーボーナスステージ…アメかな、アメくれるのかな!!」

 少し考えてからミゥはモゾモゾ動くゴブリンに向かって突進していく。

「にゃにゃにゃにゃにゃーーーーー!!」

 何か本能に逆らえないような動きであったようだ。

 血の海で笑う獣人、おそらくアレがミゥの本来の姿なのかもしれない…そう思うと…悲しい…なんて思わないのがリーフである。

(頼もしい)

 満足げに頷くのである。

 たまったもんじゃないのはクロウとヒトミである。

 すぐ横で暴れる獣人の恐怖、身動き取れない恐怖、恐怖倍率ドンッである。

 耳元でミゥの爪が空を裂くヒャンッという音が怖いのである。

(拙者、死ぬかもしれんでござる…)

(ゴブリン雑魚はアレに任せて…と…問題は、あの牛ねミノタウロス…)

「しかし、なんでこんな所にいるのかしらダンジョン中ボスくらいが関の山 草原を歩くような生き物じゃないと魔王城の門番にしては強すぎる思うんだけどな~」

 リーフは少し考えて…

(まぁ~どうでもいいけど♪)

『ブモッ?』

 ミノタウロスが妙な空気リーフの殺気を察知してリーフを見下ろす。

「何見てんのよ~…牛でも私の魅力に釘づけですか~? 解る~」

 頬に手を当てて小首を傾げて表情をつくるリーフ、とても戦闘中とは思えない。

『賢者』というより『遊び人』のほうがしっくりくる働きぶりだ。

「でも~死んで~♪ホムラ!! ホムラ!! ホムラ!! カー!! ホムラ!!」

 右手をひらひらさせながら「どんだけ~」とか言いそうなモーションで『ホムラ』を連発する殺す気満々の炎蛇大量投入、時々『カー 』を箸休め程度ブレイクタイム 火球でほっと(ホット)一息に挟むのはリーフの心に芽生えた優しさだろうか…いや違う、きっと息継ぎというかため息というか…フーッって感じなのだろう。

 とても優しさが芽生えた表情には見えない。

(怖ぇ~)

 ベンケーが眼前で変なポージングのまま焼かれていく狂牛ミノタウロスに少しだけ同情していたのは…きっと彼らの中に芽生えた友情なのだろう。

(何もしてやれなくてゴメンな…)

(いいんだブモ…最後にオマエに会えて良かったブモ)

 震えていたのは寒いからじゃない『霰』で凍ってる真っ最中悲しいから芽生えた友情? いや違う…リーフの容赦ない魔法が心の底から怖かったから…ただ♪アナタの火魔法だけが…怖かった~♪


 ブスブスとミノタウロスの焼ける匂いが食欲を刺激する川辺のほとりで、大惨事の焼身死体牛の丸焼きが転がっている。

 フンフンと鼻を鳴らして近づくミゥをヒトミが止める。

「ダメよ!! めっ!! そんなん食べたらお腹壊すのよ」

「ホントよミゥ、アレ半分人間なんだから美味しくないわよ」

「食ったことあるような口ぶりだな嬢ちゃん」

 震えながらタオルに包まり、たき火に手を翳すベンケー、ミノタウロス巨牛の丸焼きの近くにいたため、一番、ダメージ巻き添えを喰らったのだ。

 身体と歯は丈夫で良かった。

 リーフは事故の加害者広大な湖を腕組みして眺めていた。

 青い水を悠々と泳ぐウォータードラゴン蛇系の龍、手足は無いに思い馳せている。

(どうしてくれようか…アレ)

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