第13話 Curseがゴイスー

「ベロターズオリジナル食い過ぎて、オマエが虫歯になればいい」

 ヒトミがボソッと悪態を吐く。

「聴こえたわ…少し躾けようかしら」

 ヒトミの胸を指さすリーフ。

「ンガァァァアアァァ!!」

 胸を押さえて足掻くヒトミ。

「いいこと…8年間、私に尽くしなさいね」

「ハァ…ハァ…」

 息が荒くなるヒトミ

(このクソ女がーまな板レーズンがー)

「しかし…呪われたヤツが2人もいるとはね…先が思いやられるぜ」

 ベンケーがチラッとクロウを見る。

 目が合うと…

「面目ない…」

 そう、かく言うクロウも、実はしっかり呪われた侍だったのだ。


 思い起こせば、3日前、リーフ御一行は湖とは反対側の森で野宿していた。

 湧水を汲みに行った、クロウとヒトミが走って戻ってきた。

 随分早いな~とは思ったが、まさかリザードマントカゲの亜人種を20匹ほど連れてくるとは思わなかった。

 ベンケーが集めて組んだ木に『カー』でキャンプファイヤーを灯そうかという時であった。

 なんなら、ノリしだいではオクラホマミキサーでも踊っちゃおうか、などという夜にリザードマンの集落に踏み入るとは…なんとも不運としか言いようがない。

「ええい、面倒だ」

 ベンケーが斧を構えて迎え撃つ。

「アンタ…仮にも僧兵モンクでしょうが…なんで誰よりヤル気満々なの?」

 そういう賢者ビショップもすでに『コー』でリザードマンの足を止めていたりする。

「殺生でしか救えねえ魂もあるってことさ…」

 セリフの割に楽しそうに見えるのは気のせいだと思いたい。

「クロウ!! テメェも剣を抜いて反撃しねぇかバカ野郎!!」

「ダメだったでござるー!!」


 数匹のリザードマンは逃がしてしまったが…戦闘を終えた御一行、リザードマンを火葬してキャンプファイヤーに放り込んで弔いながら夕食を取る。

「トカゲの肉も美味しいわよね」

 ヒトミはこんがり焼けたリザードマンの足をブチンと食いちぎる。

「美味いにゃ」

 ミゥも腕をカミカミと噛んでいる。

「なんで剣を抜かなかったクロウ?」

 ベンケーがクロウに尋ねる。

「……拙者の刀…抜きたくても抜けぬ時があるのでござる…」

「なにソレ?」

 リーフがナイフでリザードマンの肉を削ぎながら尋ねる。

「この刀…妖刀でござる…」


 どうも大陸に渡る前に、うっかり手にして呪われたらしいのだ。

「国を追われている手前、祖国では呪いを解くことができずに…この大陸へ渡ったのでござるよ…」


「役に立たないってこと?」

「いや…抜けたり抜けなかったり…まぁ抜ければ、名刀でござる」

「抜けなければ?」

「木刀みたいなもんでござるな…」


「ハハッハハハ…」

 皆、一度は笑ったものの…すぐに大きなため息を吐いた、そんな夜であった。

「ニャハッハハッハ」

 ミゥだけは、楽しそうであった。


 食後に皆に配ったベロターズオリジナル、キャンプファイヤーの熱で溶けかけていた…。

「コレはコレで美味いけどな」


 虫歯にならないように、皆で歯は磨きました。

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