第10話 Stealがゴイスー

 派手な聞き間違いも、さることながら…盗賊シーフがオレンジのレオタードでやってくるとは想定外。

(この女、あなどれないわ)

 リーフは珍しく動揺していた。

 自身の行動、言動においてイニシアチブを取られたことが無かったのだ。

 しかも窓からオレンジのレオタードで侵入してきて、踏ん縛られている女にだ。

(余裕なのかしら?)


 レオタードの侵入者は縛られたまま、ミゥと打ち解けている。

 縄を噛んだり、引っ掻いたりするミゥが一方的に懐いたというか…面白がっているというか…何が気にいったのか、胡坐の上で喉を鳴らして目を細めてくつろいでいる。

「重いわ…この猫」

 足が痺れたのか、唐突に文句を言うほど、本人も危機感を感じていないようだ。

 そもそもミゥを猫と認識するあたり、やはり只者ではない。

(曲者ね…ちょっとイメージと違うけど…コレでいいかな)

「ミゥも懐いているし…飼い主として…面倒みてもらう…か…」

 途中から心の声を口に出していた。

 チロッとレオタード女を見るリーフ。

(腹立つけど…)

 リーフはレオタードが窮屈そうに押しつぶしている胸を見ていた。

神様のハンデってやつね負け惜しみ

 自分の胸を見るリーフ、悲しいほど、自分のつま先がよく見える。

(その他は完璧なんだから大丈夫よ、落ち込むな私)

 壁に掛かっている鏡で自分の顔を確認する。

(うん…大丈夫!!)


「で…どうするんだ?」

 退屈していたベンケーがサラミ食いながら、1本そのまま赤ワイン1本500マニーをラッパ飲みしている。

「アンタ、明日早いの!! 酒とか控えてくれない?」

「大丈夫だ、水も飲んで腹で薄めるからよ…ウィック」

「もう酔ってるでござるな」

「アンタも他人事みたいな顔してるけど、ベンケーがダメあんら、アンタが荷物持ちだから、そのつもりでね」

「なんと?」


「で…どうしましょうかね~」

 再びレオタード女に視線を戻すと「スカーッ」と寝息をたてて寝てやがる。

「この状況で?」

「んにゃ?」

 ミゥも寝てた。

「起きろ!!」

 リーフがベンケーが咥えていたサラミをサッと取り上げて、レオタード女の口に突っ込む。

「んがっ!!」

 目を覚ましたレオタード女

「何すんのよ!! 死ぬかと思ったわ!!」

「死んでも構わないわ…どうせ懸賞金付き賞金首なんじゃないの?」

「フフフ…よくぞ聞いてくれたわね、アタシの名前は怪盗ヒトミ・ルイアィ、察しの通り札付きよ」

「懸賞金額は?」

「ふん…80万マニー」

「80万ね…突き出そうかしら?」

 リーフがニィーと笑う。

「好きにすれば」

「嬢ちゃん、今から運ぶか? 警察によ」

 ベンケーがスルメを噛みながらレオタード女に凄むように顔を近づける。

「アンタ…鍵開けは得意?」

 リーフがベロターズオリジナルを鞄から取り出した。

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