第4話 habitがゴイスー
後に酒場の主はこう語ったという…
「とにかく掃除が大変だった」
けっして広くは無い場末の酒場、床はローションでヌルッヌルであった。
「ローションってヤツは、ホントーに清掃人泣かせなんですわ」
他人の迷惑を顧みない性格のリーフ、所構わずローションを発生させる大男…もはや酒場の崩壊は時間の問題、そう思われた矢先、なんとも間の悪いタイミングで現れた細身の男、小柄でリーフより背が低いようだ。
見慣れぬ服装、腰には反りのある武器を携えている。
(変な恰好…)
「そこの男、
「オナゴ? 大人毛?」
リーフが小首を傾げる。
「バカ野郎!! 他人の股間を杖で突きあげるようなヤツを女扱いできるか!! ど貧乳だしな!!」
プツン!!
周囲に聞こえるくらいリーフのナニカがキレる音がした。
「もう仲間とかいいわ…消し炭にしてあげる…
火球系の最大呪文を詠唱無しで発動させるリーフ、迷惑な性格に余りある才覚が同居しているという残念な現実を彼らは目の当たりにする。
リーフの右腕から黒い炎がゴンゴンと湧き立っている。
「私の右手が真っ赤に燃える、バカを殺せと轟き叫ぶ!! 骨まで燃えろー」
思いっきり突きだした右掌から黒い炎が大蛇のように大男の身体に巻き付き締め上げる。
「死ね!!」
リーフが右手をグッと握ると締め付けがキツくなっていく。
ゴウンッ!!
大男の身体が黒い蛇に飲まれるように消えていく…
酒場に焦げた匂いが充満する。
黒い炎蛇がかき消されたように消えると、黒い消し炭がヌボーッと立っている。
「キャハハハハ、炭になりやがったわー」
「なんてことだ…」
小柄な男が驚いたように言葉を漏らす。
「誰が…炭になったんだ?」
ボロッボロッと炭が剥がれると火傷を負った大男がニヤッと笑う。
「
歯をギリッと噛みしめ、舌打ちするリーフ。
「今度は俺の番だよな」
大男が懐からサックを取り出し、両の拳にハメる。
「
突き出された剛腕を、割って入った小柄な男が見慣れぬ武器で止める。
「双方、そこまででござる…まずは表に出るがよかろう…店主、騒がせた」
そう言うと、袖から金貨を1枚(小判)を投げた。
(ぶっ殺す…ぶっ殺す…ぶっ殺す…)
沸点は低く、一度達すると、なかなか下がらない困った性格のリーフの眉間に深いシワが刻まれている。
「
「あん? なんとなく付いて出て来たけど、アンタ、誰さ?」
「拙者、ある者を探して東方の果てから旅をしている侍…名を
「東方…ジパングのこと?」
「この地ではそう呼ばれているでござるな…」
「侍って…一騎当千の剣士よね…」
「侍が一騎当千かは知らぬが…この太刀に斬れぬものは無い…はずでござる」
(レア職種じゃないの!!)
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