第201話 騒動(2)

真尋は傍らで唖然とする八神に今度はターゲットを変え、彼の襟首をぐいっと掴み、


「おいっ! どーなってんだっ!」


すごい形相でそう言った。


「なっ・・、ち、ちがっ・・」


八神は締め上げられて苦しそうに否定しようとした。


「こら! 死んじゃう、死んじゃう!!」


南が慌てて止めた。


「う~~~、ぐるじ~~~、」


八神は目を回していた。



「斯波ちゃんじゃないって!」


南の言葉に


「は?」


真尋はようやく八神をひっつかんでいた手を緩めた。



「斯波ちゃんじゃなくて! 病気なのは斯波ちゃんのお父さんだよ!」


「斯波っちの・・お父さん???」


「だから! 斯波ちゃんは・・お父さんに骨髄を移植するために入院したんやって、」


南の説明に真尋は身体の力が一気に抜けた。



「は・・」


八神が座っている上に座り込んだ。


「ぐえっ・・」


いきなり巨体に乗っかられて八神はまたもダメージを受けた。



そして横にいた夏希をジロっと睨みつけ、


「こいつが電話で言ったんだっ! 斯波っちが入院してるって!!」


と思いっきり指を指した。


「はあ?」


今度は自分か、と思い夏希は少し後ずさりをした。



「入院してるもん、合ってんじゃん。」


南に冷静に返され、真尋はムッとして


「紛らわしいことを言うからだっ!! ったく! 慌ててNYから帰ってきちゃったじゃねーかよっ!!」


とあたり始めた。



「ちょ、ちょっとお・・あたしはちゃんと言いましたっ! 斯波さんのお父さんが病気だって!」


夏希は自分の潔白を証明しようと必死だった。



「まあまあ。 斯波のオヤジさんが重病であることには変わりないし。 けっこう深刻な状況らしいから・・。 おまえも、そんだけ斯波のこと心配してたんやなあ。 ちょっと意外やった、」


志藤はニヤっと笑って真尋を見た。




「あ?」


真尋は志藤を見た。



「普段は斯波っちなんかもうおれから外せとか拒否反応丸出しなのに。」


「そりゃ、心配すんだろ。 白血病なんて言ったらさ・・。」


真尋はようやく自分の早とちりを自覚し、ちょっと赤面した。


「す・・すみません・・どいてもらえますか・・? おも・・」


そして、八神の上に座り込んでいることにもようやく気づいた。



「おまえ一人で帰ってきたんか? エリちゃんたちは?」


志藤が言うと、



「え、一緒に帰ってきたよ・・。 絵梨沙もびっくりしてて。 あ、そーだ。 電話しとかなきゃ。 絵梨沙も心配してるし、」


真尋は携帯を取り出した。


「もう・・人騒がせやな、」


南は少し呆れた。



「すみません、ご心配を、」


萌香が真尋に頭を下げると、


「え、萌ちゃんはついてなくていいの? なんの手術だかしんないけどさ・・」


真尋は彼女の存在に気づきそう言った。


「・・終わるまでは面会謝絶なので。」


萌香はふと微笑んだ。



そして、時計を見た。





「じゃあ、麻酔をしますから。 数を1,2,3と数えていてください、」


斯波はベッドに横たわり、少々緊張していた。



ほんとに効くんだろーな・・・



若干、心配が頭をよぎる。


しかし、麻酔を入れられて数を数えようとした時



あっという間に堕ちてしまった。






ん?



ぼーっとした頭で目を開けた。



手術・・終わった??


え? ウソだろ?


まだ5分くらいしか経ってない・・



時計を見たが、なんともう3時間も過ぎていて驚いた。



そして横にされた自分の身体が動かせないことに気づく。


背中から穴を開けて骨髄を採取したので仰向けは厳禁だった。




ど、どーなっちゃってんだ・・。



斯波はまだ麻酔から覚醒してないかのように頭がぼんやりとしていた。


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