第200話 騒動(1)

「って・・あれ? 今どこですか?」


夏希は言った。


「ニューヨーク、」


「は?」


「ニューヨーク!!」


真尋は休暇で一家で絵梨沙の父親のいるNYに滞在中だった。




休暇中なのに、この忙しい時に・・




夏希は顔をしかめた。


「で、なんですか?」


迷惑そうに言うと、


「なんか電波わる・・。 お前の声よく聞こえない・・」


真尋は携帯から電話をしているらしく電波の状態がよくなかった。


「こっちはよく聞こえてますけど? で、なんですか?」


「なんか新しい仕事とか入ってないかな~~~とか、」


「別に・・」


「別にって!」



「ほんっとにもー、忙しいんですよ! 斯波さんがお父さんの白血病の治療で、骨髄とかを移植する手術することになって入院しちゃって!!」




夏希の声は真尋にはこう聞こえた。




「・・・斯波さんが・・・白血病・・・で、・・・手術する・・・入院しちゃって!!」




「はっ!???」


さすがの真尋も血の気が引いた。


「は・・白血病?? って・・あの、え? 血液の・・ガンとかゆーヤツ??」


「・・あたしも、詳しいことはわかんないんですけど、それで、入院・・」


また肝心なところで電波が切れて、そのまま電話は切れてしまった。



ウソ・・


斯波っちが!?


白血病って・・



真尋は呆然とした。


「どうしたの?」


横にいた絵梨沙はただごとではない気がして真尋の顔を覗き込んだ。



真尋はハッとして絵梨沙の両肩を掴んで、


「え、絵梨沙!! どーしよ! 斯波っちが死んじゃう!!」


そう叫んだ。



「はあ?」


突然そんなことを言われた絵梨沙は目を丸くした。


「帰らなきゃ・・」


そして突然立ち上がった彼に、


「ちょっと、待ってよ・・。 斯波さんが死んじゃうって!」


絵梨沙も立ち上がった。


「斯波っちが! 白血病になっちゃったって!!」


「えっ・・」


さすがに絵梨沙も呆然とした。





そんな騒ぎになっているとは露知らず。


斯波は入院をしたが、とりあえず今日は検査だけで病室でジッとしているように言われた。




はあああ


なんっか


慣れねえなあ・・。



斯波もさすがに不安な気持ちになってしまった。




そして


手術当日。


萌香は病院にも行かずに、不安を振り切るように仕事に没頭した。


みんな気を遣って彼女に病院に行くように言ったのだが、それを聞き入れなかった。




手術が終わるまでは・・



萌香は斯波と斯波の父の無事を祈った。




そんな中


何とも言えないその空気を打ち破るように



「斯波っち!!」


いるわけもない斯波の名を叫んでドアをけたたましく開けて大声で入ってくる男が一人・・


「ま、真尋?」


南はその大声に驚いて振り向いた。


「南ちゃん!! なんでおれに教えてくんなかったんだっ!」


すんごい怖い顔で真尋に食いつかれ、


「はあ??」


南はさすがに怯んだ。


真尋は志藤もジロっと睨みつけ、



「志藤さんも! なんでおれに知らせてくんないんだよっ! 斯波っちはどこにいるんだよっ!!」


もう取り乱して手がつけられなかった。




ずんずんとすごい勢いで志藤に掴みかかるようにそう言った。


「って・・おまえ・・帰ってくるの・・来月じゃ・・」


志藤は何だか怖くなって怖気づきながらそう言った。



「斯波っち、どーなってんの!? まさか、死んじゃったの!?」


突拍子もないことを言ってくる真尋に一同、




「はあ?」


一斉に声を上げた。

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