第62話 デット・ロック(2)

今頃


彼女は・・



斯波は部屋に戻ってからも


今、この部屋の隣で


二人が


なにをしているのか、を想像するだけで


胸の中をぐちゃぐちゃにかき回されるような気持ちになり。




苦しくて


苦しくて


どうしようもない自分。



頭がおかしくなりそうな自分。



ソファに座って頭を抱えた。



なんなんだよ


この気持ちは・・





私は


きっと


一生自由になれることはない。


神様が与えた


罰だ。




萌香は


十和田に抱かれることも


拒否することなく


ぼんやりと天井を見つめた。




こうやって


自由もなく


籠の中の鳥のように。



涙が頬を伝わる。



誰かに助けてもらおうだなんて


ムシがいいこと。



「・・萌香は・・おれのもんや・・誰にも・・渡さない、」


彼に囁かれる。



無機質に


彼の愛撫に


なすがままで。




しかし


十和田は苦しそうに息をして


途中で


その行為をやめた。




「・・・?」


萌香は彼の様子に怪訝な顔をする。


「・・アカン・・。」


彼は大きく息をついた。


「どこか・・身体の具合が悪いんですか、」


思わずそう言うと、


「・・おれのことは、いい。」


彼は短くそれだけ言って、彼女の身体に顔を埋めたまま動かなくなってしまった。



斯波は


母が置いていったバーボンをストレートで飲んだ。


酒の苦手な彼にはむせかえるほどだったが、もう平常心でいられないのだった。




嫌がる彼女を


止めることができなかった




一瞬


彼女は助けを求める目を自分に投げかけたのに。




きっと


これからもあの男はここを訪ねて来るんだろう。



彼女を抱きに。





いつの間にか


眠ってしまったようだった。


酔いに任せてくたばっていただけで。


全然、寝ていない気がした。



頭・・いて・・。



飲めない酒を無理して飲んだ。


頭の中は


萌香のことばかりだった。



彼女には


もっともっと


消してしまいたい過去がある。



あの男から逃れられない理由は


きっとある。




おれは


いったい彼女をどうしたいっていうんだ。




自分自身に問いかけても


何も答えは見つからなかった。




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