第43話 ひみつのあいどる

 うちに向かってゾロゾロ歩いてる。


「いくら見てもらったってすぐにお金にならないわ大した額じゃないし、食べ物ないのよねじゃあ昼食代皆の分私に頂戴朝昼面倒見てあげるから」

「さすが姫様アイドル様」

「二千円も有ればなんとかなる、米だけは有るでしょ」

「今から炊くのですか」

「それが基本よ」


 今まで黙っていた母が、

「あのぜんしゅうの母で五來ごらい三好みよしと申します、よろしかったらうちで朝食いかがですか、大したおもてなしはできませんが」

 姫様真っ先に食いついてきた。


「よろしいのですか、助かります私たち貧乏所帯なものですから」

「どうぞどうぞ、青空市からボランティアでよく来て頂きました、お礼にもなりませんが是非」


 なるほど貧乏世帯というだけあって駐車料金が掛かる!って慌てて一人が車を取りに走った。

 後の三人は一緒に歩いて寺に向かう。


「えっといざよいさんて呼んだらいいですか」

 横から「姫様よ」

「営業ネームだから十六夜いざよいでいい、五來さんて珍しいねどんな字書くの」

「漢数字の五と来るの横棒の下がないような字です、後で書きます」

「ぜんしゅうも難しそう」

「はいお寺の子だからかな」

「あそうかそれで尼さんの見習いなんだ、おかあさんも、、いやなんでもない」


 やっぱりこの人にも分かるのかな仏様の様なお母さん。


「お母さんは私にとって仏様なんです、死にかけた私を黄泉まで迎えに来てくれたの」

「なるほどねそれで見えるようになったのね、私は、、、覚えてない物心ついた頃から座敷童がそばにいたし、小さいとき何か有ったのかも知れないけど母は何も言ってくれない、霊を払える事も妖しに教えてもらったの」

「妖しって妖怪さん?」

「まあ同じといえば同じね、私は人に悪さをするのを妖怪って呼んで座敷童みたいな子は妖しって区物してるの」


 お母さんが、

「人も妖しも同じですよいい人もいれば悪い人もいます妖怪だって元は人だったんだから、ここですどうぞお入りください」


 タイミングよく一台の車がやってきた、さっき車を取りに行った人の様だ。

「車は向いの駐車場に止めてください」



 うちはお寺だから門が有って入って正面が本堂右に進むと住居で、住居の方に向かおうとしたら十六夜さんが、

「ねえこっちがお寺?見てもいい?」


 お母さんが「大したお寺じゃありませんけどご覧になりますか」

「私お寺って入ったことが無いんです、どんなところか見てみたくて」

「姫様お寺ご存じなかったんですか」

「だって両親健在だし爺さんばあさんの話聞いたことも無いんだもん」

「まあ十六夜姫ですから空から落ちてきて地球に潜んでいたエイリアンに育てられたって事でしょう」

「宇宙人にしないで両親はDNA検査で間違いないって医者のお墨付き、産院で誘拐されかけたのよ」

「じゃあUFOにさらわれて魔改造されて戻されたんでしょう」

「よく分かってるわね十分あり得るわ」

「冗談なんですけど」


 十六夜さんは軽くジャンプをして見せる、足の先が目の高さを超えた、こんなジャンプ初めて見た。


「私は真っ暗闇でも普通以上に速く走れる、魔改造されてるとしか思えないわ」

「そうでしたノミのジャンプ力は卑怯です」

「なんなのその例えヒョウとかチータにしなさいよ」

「体の何十倍も跳べるのはノミくらいしかおりません」

「いくら何でも20メーターは跳べないわ、空を飛べるのは風子の力、ガーゴイルみたいに言わないで」

「ガーゴイルって何ですか」

 思わず聞いてしまった。


「空想の魔物よ、私が全力を出せばそれくらいの力が出せちゃうかも、人には見せられないけど」

「先代の十六夜様は千年生きられたと伝えられております」

「余計なこと言わない、先の姫とは違うの何代も人の血が混じっているほとんど人と変わらないわ」

「何をおっしゃいます自力で月まで行けそうなお方が」

「宇宙服でもなけりゃ息が出来ないし、それに月って昼間は丸焼きになって夜には冷凍チキンになってしまうのよ」

「さようでフクロウでございました」


私「フクロウ?」

「そうなのです姫は梟の化身なのです」

「化身?」

「これ困ってるじゃない変な事言わないの、何故か知らないけどフクロウ的な能力を持ってるって言うか、夜目が利いて特別な服で飛べはしないけど滑空、ムササビ知ってる木の上から飛び出して紙飛行機みたいにすうっと飛ぶの、そんな事も出来るしそうね木に登って枝の上で眠れるわね」

「虫とか小動物を狩りをして食べたり」

「小動物は食べないわ人間の部分で止めているこの顔でうさぎとか咥えてたらそれこそバケモノだわ、ヒカルの電気の方が好物よ」

「そりゃ天使の光さまはさぞ美味しいでしょう」

「ヒカルは食べません可愛がってるだけ、いない時に言わないで会いたいの我慢してるんだから」

「相思相愛ですものねえ」


姫と呼ばれる人の猛禽の目が恥ずかしがる少女の目に変わった。

「あの子は何が有っても私が守ってみせるわ」

 すぐに猛禽の目に戻っていた。


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