第41話 守るもの

 結局璃子は狐横丁から出るまでは目を覚まさなかった、と言うより興津姫に眠らされたままで興津姫の「時間だわ」その一言で私たちは狐横丁の出口に立っていた。


 眠っていた筈の璃子は眠そうな顔でポカーンと立っている。

「えっと何してたっけ」

「タヌキを倒す方法を聞きに信太しのださんのお店に行ってたんだけど、狐横丁に入った瞬間璃子は眠っちゃってどうしても起きなかったのここを出るまでは目を覚まさないって神様に言われたから起こすのあきらめた」

「えっ神様!えっとーあーだめ何も思い出せない、入る前までは覚えているけど」


「あのタヌキだけは送れなかったの、それでこの後どうしたらいいか聞きに行ったのよ」

「それでタヌキを何とかする方法は聞けたの」

「うん聞けた、あっ今何時だろ」

「えっまだ5分も経ってないでしょ、7時35分」

 璃子は腕時計を見て言った。


(時計合ってるのかな、一時間二時間経ってる気がする)

「璃子学校行くの?」

「善繡は?」

「私は例のタヌキを探して一刻も早く黄泉に送らないといけないから、これは尼になるための修行だから」

「一人で探せるの、ごめんなんか疲れちゃった一旦家に戻るわ、あとでメールするね」


 璃子の事は心配だけど神様が払ってくれたから大丈夫でしょう、いざとなったら様子が伺えるはず、お花の髪飾りで。

(璃子は何も気づかなかったって事は人には見えないんだろう)


 ただこの時間皆が登校する時間なので私が私服でウロウロしていたらいちいちどうしたのって声を掛けられるに違いないそれにお腹ペコペコ、一旦うちへ帰ろう。


 うちへ帰ってご飯を食べ今日は狸の霊を探さなきゃいけないってお母さんに伝える。

「これ持って行きなさい」

 お母さんの数珠を渡された。

「あーこれ持ってたら無敵だよ初めから借りてたら良かった、狸に化かされずにすんだのに」

「化かされたの?」

「化かされたって言うかすぐ消えちゃうから逃げられちゃった」

「でも狸さんもかわいそうね何も悪い事していないのに」

「うん分かってる、だからそういう狸たちは納得して黄泉に帰ってもらったの、ただ恨みが集まったのが悪霊に姿を変えちゃって人に害を与えるようになってしまったから放置できないんだ、私はあの欲張り爺さんが死んでからも狸を利用したんじゃないかと思うんだ」

「あの爺さんの霊が狸たちをそそのかしたって言うのかい」

「そうそれ、言葉に出来なかったけどそれなんだ、あの大狸だけは異質なの他の子はやっと解放されたって感じだったけどあの大狸だけは恨みを晴らしてやるって怨念しかないって思える、お母さん何か感じなかった?」

「私も説得してみたけど全く聞いてもらえなかったわ、私が何もできなかった事を善繡に任せていいのかしら、そうなのね死んでも狸を利用して狸のせいにしようとしているのね、分かりましたお手伝いしましょ放っておけないわ」


 (仏のお母さんが怒ってる、仏の顔も三度っていうあれかも)

「おかあさんありがとう、これで無敵だわ」


大狸大狸大狸、頭に思い浮かべてみるやはり商店街の方向に気配を感じる。

 

 狸退治に向かう最中、

「お母さん私神様に悪いものが探せるアンテナを頂いたの」

「まあその髪飾り神様がくださったの」

「なーんだやっぱりお母さんには見えてたんだ髪飾り、狐横丁の再開に励みなさいって事だと思うよ」

「そう神様も狐横丁の復活を望んでらしてるのね」

「それと迷った魂を送る事、悪い霊が増えると空気が汚れるんだって」

「確かに汚れる気がするわ」

「あれっ狸が商店街を離れていく南へ向かっている、走ってるみたい」


「どうしたのかなあの狸駅の方に走ってる」

「その神様のアンテナなのかわいらしい髪飾りね」


(髪飾りより狸の様子がおかしいんですけど)

「あっ何か来た狸が焦ってる」

「霊を払う者かしら?」

「んー良く分からない、そんなに強いパワーじゃないね」

「陰陽師かしら、でも陰陽師って今の世の中にいるのかねえ」

「陰陽師ってあべの何とかさん?」

「そうそう安倍晴明ってとっても力のある方が昔はいらっしゃったのよ」

「あーそいう人かも知れない、大狸を追っかけてるのかも」

「そんな人がいるのかねえ」


 大狸を追う私はともかく狸のいく方向に向かう。(アンテナが有って大助かり)


「狸ずいぶん慌てているみたいあっちこっちに向きを変えてる、また商店街の方に向かっているわ」

「気配を感じてるならかなり力のある人なんでしょうね」

「んーでも、、、人だからあまり気配を感じないのかな、あっ違うこのアンテナは私が思い浮かべないと反応しない筈なの、それでも割り込んできたんだからやっぱり力は有るのかもしれない、あっ狸がこっちに向かってくる」

「捕まえられるかねえ」

 母は呑気そうに言った。

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