第37話 お仲間以上?

 国宝くにかねさんというのは同じ中学で同学年同じの組の女の子。

私の頭が回復してやっと他の人と話せるようになった頃から親切にしてくれている。


 ただ初めの頃は話し方が命令口調で私をしもべの様に扱いたい「姫」じゃないかと勘違いしていた。


 彼女は国宝くにかね神社の娘で小学生の頃からカリスマ巫女と呼ばれてちやほやされているらしい。

 それも当然のこと彼女が巫女になるまで父の神主一人、母の巫女兼雑用全般の二人しかいない寂れた神社だった、神主の父はアルバイトで生計を立てて何とか神社を続けていたとか。(うちの寺と同じだ)


 母の体調がすぐれない時に替わりに巫女を引き受け、ほとんど人のいないお正月行事で舞いを披露した動画がネットに流れ爆発的ヒットとなった。


 それ以来参拝客がうなぎのぼりとなりいつの間にか10名を超える神社関係者のトップの顔として(実務は別)持ち上げられた、そりゃ我儘にもなるでしょ。


 彼女が居ない時に周りの子が教えてくれた、「だからカリスマなのよ」と。


 そして私がお寺の子と分かると更に距離を縮めてきた「心の友よ」って感じで。

 ただ私は読経さえ最近始めたばかりでお寺の事は何も知らない、ただ怪異は誰よりも経験豊富、そのあたりに興味を持たれているのかな。



 翌朝昨日の商店街の印をつけた場所に着くとすぐに普段着の国宝さんが走ってやってきた。

「おはよう、間に合った?」

「おはよう、今来たところ」


 昨日貼り付けた木の枝を見て、

「やっぱり集まってる、そこの電柱、何か感じない?」

私が聞くと、

「んーそれを聞いたらゾクッとしたから、感じてないって事ね何か見える方法とかって無いの?」

「無い事はないけどおそらく戻って来られない」

「って言うと?」

「一回死んでみる」

「えっ遠慮させてもらいます、やっぱり一線を越えないとダメなのか、まあいいけど私はアイドル巫女だから、何体居るの?」


 電柱回りの霊をさっと数えて、

「んー二十三十は居るね」

「うっわー、それだけいても何も感じないか」


 そう言ってから私の右手を両手で挟んだ。

「?」

「霊力拝借。。。」

 直ぐに手を離す。


「ちびった」

「えっ」

「見えちゃった、すごいわ五來さんこれを見て平気そうにしてるんだもん」

「慣れているだけ、逃げたくても足が動かなかったしどうにもならなかった、死んでみなくても見えるんだ」


 もう一度私の手を握る。

「五來さんの力でしょ、うーきもいなんか辛い力が抜ける」

「じゃあ腕をつかんで見ていて」


 解放された手に水鉄砲を構え柄を押して浄化の水を噴射。

「ぎゃていぎゃてい はらぎゃてい はらそうぎゃてい ぼじそわか」


 噴射された水がキラキラと空中を舞いキラキラが消えると霞のようなモヤが消えている。

「心安らかにお休みください」

 心の中でつぶやくと。


 ぎゅっと横から抱き付かれた。

「すごい、マジシャンどころじゃないわ、超能力者よわたし、、、」

 さらに力を込めて抱いてくる。

「惚れちゃった」


(えっ、、、なんて答えたら。。。)

「大丈夫誰にも言わない、あー参ったもう感激で一杯、あっ。。。」

「どうしたの?」


 彼女は黙って下を向く。

「漏らしちゃってた、感激したら漏らしちゃうことも有るんだ、じゃあ後で学校でね」


国宝さんは漏らしたことは大して気にせず駆けて行った。

(なんだお漏らしくらい気にする事もなかったって事なの)

 自分は随分気にしてたけど。


 私も次の場所へ行こうとして足を出そうとしたが足が上がらなかった、体は前に行こうとしていたので前につんのめって両手で前かがみの体を支える、そして地面から手を離そうとしたが手も上がらない、四つん這いで動けない。


「うううー」

呻いていたら「どうしたの?」

国宝さんが戻ってきていた。

「動けない」

「動けないって手を上げて」


 国宝さんが私の右腕を掴んで立たせようとしたがビクとも動かない。

「むむむ、見えた!」


国宝さんはポケットから白い紙の幣束を取り出し振り下ろす。


 地面にくっ付いていた手がパッと離れた、起き上がると周りにはなにも居なかった。

「助かったー国宝くにかねさんありがとう」

璃子りこって呼んで、助けられて良かった」

「何だったの見えた?」

「狸、でっかいの、スケスケだったけど」

「狸の親玉かな手ごわそう」

「ラスボスってとこかな、さっきのキラキラは?」


 国宝さんには水鉄砲は見えてなかった様だ、神様の物だし。

「先に足を捕まえられて手を着いちゃって手も固定されたから動けなかったの、国宝くにかねさんが居なかったら憑りつかれていたかも」

「憑りつかれたらどうなるの?」

「寝込むかもしれないし、そそのかされて悪い事をするかもしれない、最悪相手の思うまま動かされてしまう」

「やっば、間に合って良かった、でもまた襲ってくるかも」

「どうかなあ、あいつらって記憶力無いから行き当たりばったりで憑りつこうとするのだから誰が被害者になるか分からないんだ、だからわたし今日はパトロールしなくちゃ」

「えっ学校休むの」

「うん一日くらい休んでも何てことない、これは私のお仕事だから放置できない」

「うーん分かったそれじゃあ私も援護する、今みたいな事が起こったら困るから」

「えっでもそんなの、私はバカだから構わないけど国宝さん優等生なのにダメだよ」

「だめ璃子って呼んで、それに何日休んだって私は遅れたりしない、それに一番大切にしなきゃならないものは五來さんあなただもの」


(いやそれは、、、)

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