第35話 阿弥陀仏
「でもなあ昼間っから除霊する訳にもいかないし、そうだあの霊の本拠地ってどこなの」
「それが困ったことになってるの、本拠地は初めに崩れた例の家だったんだけど、きれいさっぱり更地にされて霊たちは居場所を失くしたの、ばらばらになって住みやすい場所に潜んでいる」
「えっそれじゃあ、、、今朝みたいにしらみつぶし的に満遍なく除霊をするって事、よその家の中まで入れないよ」
「そうなの、固まらずに薄まって行ってくれたら問題はないけど、どこかに餌みたいなのが有ると固まってしまうかもしれないわ」
「えっあれで固まっていなかったのすごい数だったけど」
「元の家が崩れた訳が分かったでしょ、とてもじゃないけど人の住める場所じゃなかったの」
「恨みが家を滅ぼしたって事、どこまで恨まれてるのあの爺さんの
今まで黙っていた信太さんが、
「それ行けるんじゃない、集めた方が送りやすいでしょ」
「そりゃそうだけど例の爺さんてどうやって分かって貰うの」
「それなら出来るわ信太庭に落ちてる木の枝を出来るだけ集めて」
「小さい枝で良いのですか」
「大きさは関係ない、新しい方が良いわ」
「じゃあ私も、、、」
信太さんの後を追って立ちかけた私を興津姫が止める。
「それが信太の役目、任せてあげて」
「ああ神様ですもんね」
「除霊は不本意でもキメラの役目頼むわね」
「不本意じゃないです、出来るだけ心を静めて黄泉に送ってあげたい」
「そうよそれがあなたの役目よこの先もね」
「そうなんだ、私はこれを続けて行けばいいのか」
「でも自分の生活を守るのは自分よ、そっちを優先させないと行き詰ってしまうわ」
「そういう事か、霊の事はあくまでボランティアでお寺と此処のお仕事、ってここ当てにしていいのかな」
「大丈夫、妖しは木の葉程度しか持ってないけど神は羽振りの良い神も居るから此処を潰すような事にはならないわ」
「他に聞きたい事が有ったんじゃないの」
「う、うん聞きたい気もする、聞かないほうがいい気も、、、」
私の躊躇いを気にせず興津姫は話し出した。
「信太は狐よ生まれた時から神様として祀られたの、だから狐を自覚する前に神になったとても珍しい神なのよ」
「じゃあ私が乗った狐は、、、」
「本人は気付いてもないけどあれが信太そのものよ」
「そういう事、言わないほうが良いの」
「そうね今のまま悩んでいる方が面白いわ」
私には分かったそういう言い方をするけど今のままが良いって事が。
「いつも掃除をしてるから少ししかないと思ったけど以外に有るものね、これくらいで良いですか」
「足りなかったらまた集めればいいわ、キメラ帰りにこれをあなたが除霊できる範囲に電柱に押し付けて勝手にくっ付くから」
信太さんが拾ってきた枝はいつの間にか興津姫の手の中にあり人型に切り取られた紙が張り付いていた。
「暗くなってからの方が良いねいたずらされそう」
「大丈夫よもう人には見えないから、キメラだけの目印だから」
「そうなんだ、早く解放してあげたい」
「そうねもう恨む相手も居なくなった、放っておけば暴走するだけ、それこそ強制執行されて消滅させられるわ」
「それはだれが？」
「この地を守る土地の神ただここは今は不在だから、月の神の使者が見つけてくれたら救われる」
「えっ不在？」
（もしかして信太さん？？？でも信太さんの耳には入れない方が良いのかな）
「えっと月の神の使者ってなに？」
「宇宙神かな交わる事のない神、地上の神が誰も見た事も言葉を交わしたこともない神かどうかも分からない宇宙そのものなのかもしれない仏教でいうところの阿弥陀仏、伝説ではその者が月を訪れ髪の毛一本を残していったそれが月の姫神となり、その姫神が地球を訪れ地上に何人かの子供を残していった、それらは輪廻転生を司る神となり日本で育った十六夜姫は日本の各地で子供を残し月の民の村をいくつか作ったのそこに住む者は人と神の相の子、ハーフねその人たちが月の使者」
私はぐるぐる考え、
「その人たちが黄泉送りをするって事」
「そうだけど目的は輪廻転生の輪に戻すこと、ただ何処までがほんとの事か分かってないわ、半分宇宙人だしだから交流も無く今では存在も不明なのよ」
「あっ宇宙人なのか、そっか元は宇宙のどこにいるかもわからないいわばUMAだものね、えっといまでも何処かに月の姫が居るかもしれないの」
「そう、だから」
私の手を握って、
「もしかすると同じ相手を追って鉢合わせするかもしれない、可能性は低いけどねもし出会う機会が有ったら出来るだけ何でもいいから聞き出して欲しいの、仲間は居るのかとか移動はどうしてるとか何か特別なアイテム持っているのかとか、まあ出会う事なんて奇跡みたいなものだと思うけど」
「うん私も興味ある、けどもし一瞬で送られたら使いの子って分かる気がしないんだけど」
「分かればで良いのよ、分かったところで何もできないんだから」
「それならいいけど」
「じゃあ感度を高めておくか」
「エッ感度？」
私の髪の毛を一束掴んで、
「髪の毛って敏感なのよ、ただ現代人は有効利用できてない目の方ばかり神経を集中させているから、盲目の人は感性が鋭いって言うでしょ、ハイ出来たここに神経を集中させて」
「そう言われても髪の毛に触ったら分かるくらいで」
興津姫は私から少し離れていた。
「あれまだ触られている感じがするけど」
「その部分に神経を集中させて何が触れているか考えてみて」
「うー何も触ってないけど何か感じる」
「目を瞑ってみて」
「うん」
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