第34話 動物霊
狐横丁から外に出るとまだ人の気配はなかった、通行止めになっているので人が通らないし開店準備も始める訳にもいかないからかな。
今日も動物たちの怒った声が響いている、いったい何が有ったのだろう。
幸い人が居ないので肩に掛けた(神様の)竹製の水鉄砲を構え辺りに水を撒く、騒いでいた動物たちが一気に声を潜めた。
滝で水を飛ばした時は勢いよく飛び出したけどここでは勢いは弱いが大きく広がりあっちこっちに振りまかなくても満遍なく周囲を浄化出来ている様だ。
浄化と言っても霊を消し去る訳ではない、怒り狂った霊の怒りを鎮め水に流して黄泉に送るんだ、そうすることによって輪廻転生できる、新しい命となってまたこの世に生まれ出てくる事が出来る、、、はず。
誰か話ができるような霊は居ないものか、動物の霊が怒っている事情を私は知りたい。
一通りこの柵の中は蒔き終えた、でも完ぺきに浄化出来た訳ではない、本家本元が何処か分かっていない、夕方になれば元の木阿弥に戻っている可能性もある。
スルーしてしまった葛の葉に向かった、信太さんはもちろんのこと何故か興津姫がこんなに朝早く来ていた。
「おはよ えっ!興津姫」
「何驚いてるのキメラが戦っているのに放っておける訳ないでしょ」
「分かってたんだ、じゃあ教えてあれは何?どうして動物が怒っているの」
「まあ落ち着いてそこへ座って」
「あっ信太さんごめんなさい、さっき通ったんだけど人が出てくる前にって急いでいたから通り過ぎちゃった」
「いいのよキメラは大変な事一人でやっているんだから、私も手伝えたらいいんだけど狐横丁の外は手も足も出なくってごめんね」
興津姫が手招きするので四人席の正面に座ろうとしたら、
「横に来て」
興津姫の横に腰掛けると「付かれてる」
私の頭や肩の辺りを指でつまんでひねった。
「まあこんなモノでどうにかなるキメラじゃないけど他の人は気分が悪くなったりするかもね」
「何が憑いてるの」
「憑りつかれてる訳じゃないのよ、ただくっ付いているだけ、まあ聞いて聞いてって感じね」
「んーキャンキャンとかウーって唸ってるのは分かるんだけど何を言いたいのか理解できないの」
「純粋な動物の霊だから言葉にならないの、ペットでも気持ちは想像でしか分からないでしょ」
「この前の山の狸は気持ちが伝わって来たけど」
「あれは狸の妖怪なのよ、人の霊が狸に憑りついてる」
「はあ、それで気持ちが伝わったのか」
私の体を目でチェックしながら、
「これは人に殺された動物たち、狸が多いわね、ずっと昔から沢山の動物が殺されたのね」
「例の家主の爺さん?」
「そう、家におびき寄せたり狩りにも行ってた様ね、昔は沢山居たんでしょうね」
「どうしてそんな事を」
「お金儲けよ、イノシシとか鹿の肉ってごまかして売ってたんじゃないの、戦後ならなんでも売れたでしょうね」
「でも狩猟とか他でもやってるけど霊が何とかって聞いたことないけど」
「猟銃で仕留められたら恨むまでもなく直ぐに死んでしまう、この動物たちは生かされていて、お肉が必要になった時に棒で叩くとか無残な殺され方をしたんでしょう、檻の中からそれを見て怯えた物も居るはずよ」
「そりゃ恨まれるわ、爺さん良く生きてたわね」
「図太い人間もいるからね、でも最後は地獄に引きずられて今でも焼かれ続けているでしょうね」
「うわーだめ、思い出しちゃう、殺された方がましなんだよ、、、あれ、、、そんなに苦しくない、思い出すだけで血を吐きそうな気分になっていたのに」
私は首を押さえてみる。
「キメラが苦しむ事なんて無かったのにね、親の因果のせいで子を苦しめるなんて、子供はね神様じゃなくて親に
「い、いやそれは親のせいです、あの親の自分勝手なせいです、興津姫が謝る事じゃないです」
「そういう事じゃなくて、昔から神は弱いものを見捨ててきたのよ、もっと近くに居たら助けてって声が聞こえたんでしょうけど、あっちこっち飛び回っているから、良い訳に過ぎないけど手が回らないの」
「それでも私は助けてもらった」
「あなたを助けたのは今のお母さんでしょ、私たちが関与したのはその後よ」
「うん、でもこの前も助けてくれたじゃない」
「それも違う、私たちが助けてもらったの、私たちでもてこ
「えっと、それじゃあ今の私陰陽師の代わりをしてるって事なの」
「陰陽師とはやり方が違うけど黄泉に送る事だけは同じね」
「何が違うの?」
「キメラは強制的に黄泉に送っている訳じゃない、手を引いて自分で帰らせてあげている、陰陽師は大抵強制執行よ、有無を言わさず追放」
「そういう事か良かった」
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