第20話 神様の力

 信太さんの口が動いた。


 目が開くそして。

「ゲホッゴホッ」

 体を横にして咳込んでいる。

 腕を上に伸ばして手を開き何かを求めている様子。


 手に持った空のコップに水を少し入れ急いで信太さんに渡してみる。

 体を起こして口に含み直ぐに「ブハッ」っとその場に吐き出した。

 タオルを持ってきて信田さんの口の周りを拭き「だいじょ、、、」(大丈夫)

 と言いかけたら、


「あー死ぬかと思った」

(一応生きているんだ)


 と大きく息をした。


「どうしたんですか」(あんな所で)

「少しだから良かったけど、もう少し大きかったら高天下原たかあまがはらに飛ばされていたわ、キメラには元気の元だけど私には劇薬、奥津姫の力は私の何千倍も有るから」


(木の実の事!)

「えっ劇薬、で、でも私すごく元気になれたから信太さんも回復できるかと思ってごめんなさい」

「いいのよ私どうなっていたの」

「狐横丁の一番奥の桜の木から山に入った所で倒れていたんです」

「えっ山の中? で、あら? そうよお砂糖を買いに行ったの、、、橋を渡ったのは覚えているけど、、、」


 私は立ち上がって、

「立てる?」

 信太さんは自分の体を眺め、

「わっ、なにこれパンパンになってる、まずいかもキメラ木の実残ってない?」

「木の実?さっきので終わり」

「探して吐き出したのでもいいから」


 私は信太さんが吐き出した水の所にかがんで木の実の欠片を探しながら、

「浄化の滝じゃダメですか?」

 と聞いてみた。


「浄化の滝?何のこと」

「信太さんを探しに行って山の中で、、、」

 私はさっき自分の身に起こった事を大まかに話した、あまり大した事じゃ無かった風に。


「あっ、、、ごめん、そんな事が有ったのそれで奥津姫に助けられたのね」

「うん、それで一週間浄化の滝に通いなさいって」

「一週間、かなり悪い霊に憑かれたみたいね今は大丈夫なの」

「うん木の実のおかげかいつもより元気」

「でも私はヤバイなさっきの二の舞になるかも知れない、キメラは奥津姫が付いてくれているけど私は無防備だから」

「奥津姫は浄化したって言ってたけど残ってるかも、全部浄化したら私まで消えて無くなるって言ってたから」

「すごいわねキメラ、神様に守られてるなんて」

「でもわたし信太さんにだって守られている」


 少し間が空いて、

「私はそこまで力が無いわこの場所に少しの時間悪いものを寄せ付けないとかキメラの心に突っかかっていたモノを取り除くきっかけのヒントを与えただけ、キメラが良くなったのは自分の力よ」

「でも自分だけじゃどうにもならなかった信太さんのおかげです、んーこれかもゴミかもしれないけど」


 床に落ちていたオレンジっぽく見える米粒の十分の一くらいの粒を指先にくっ付けて眺める」

「ちょうだい飲み込んでみる」

「でもただのゴミかもしれない」

「ゴミくらい平気よ木の実だったら私伸びてしまう、伸びてしまったら放っておいて明日様子を見に来て一日くらい目が覚めないかもしれない」

「劇薬なんでしょ大丈夫なの」

「だから何かを追い出すにはこれしかないのキメラはもう帰って、これ以上無様な姿を見られたくないわ」


 信太さんの言葉には妙に力が有るそう言われたら<はいそうです>とすぐに納得させられてしまう。

「じゃあまた明日来るから」


 帰ったら夕方だった、家に入った所までは記憶が有るが直ぐに夢の中へ引き込まれていた。

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