第17話 つむじ風
どうやって洞窟から抜けたのか分からないがクルクル回転する体にくっ付いた頭が空、緑(木)空、緑と交互に景色を変える。
どうやら忌まわしい洞窟から強風で飛び出した様だ、でも安心なんてとてもできない、風が弱まれば木の高さを超えるところから真っ逆さまに落下する。
ひゅうーーー、横に運ぶ風が弱まり下から風が当たる。
気が付けば草むらの中で目を開けた。???
(えっいつの間に着地?)それに洞窟にいた記憶があいまいだ、まるで夢を見ていたかのように。
でも夢でなかったのとすぐに実感したお気に入りの緑色のメイド服が泥まみれで真っ黒、濡れた服に風が当たり体温が奪われる。
と思ったら風がやんだ、お日様が体を温めてくれる。
少しほっとしたら声が聞こえた。
「キメラ立てる?」
「あっ
「まだよ、キメラの体は今悪霊まみれよ、早く浄化しないと自分を失ってしまう、立って」
「悪霊まみれ???」
「さっきの雷で霊は少しの間は行動できない、今のうちに浄化しなければいけないわ」
「わ、分かった、どうすれば良いの」
「その前にすぐそこに信太が倒れている、でも近付いてはダメいまのキメラは悪霊そのものより質が悪いの、悪霊の欠片を花びらの様に振りまいている弱った信田は格好の餌食になってしまう。出来るだけ離れて出来るだけ早く通り過ぎて、いい、目に入ってもすぐに目をそらすのよ出来たら初めから目に入れないで、悪霊に気付かれない様に、山に向かって道を歩いて」
奥津姫の言葉は切羽詰まっていた、きっと時間がないんだ、急がないと。
山に向かう道を歩き始めると二十メートルほど先で道を右に外れた所に何か有る、おそらく人が倒れている、おそらく信太さん、私は目に入れない様に左ばかり向いてなるだけ道を外れてそれに近付かない様に通り過ぎた。
「奥津姫これで良かった」
「大丈夫、キメラ気にしないで先を急いで、疲れているのは分かってるでも生きるか死ぬかの境目よ滝までたどり着けば後は何とかするから」
「う、うん急ぐ、この道通りに進めばいいの」
「途中に三差路が有るから右へ行くのよ」
「分かった」
しばらく全力で黙って早歩く、確かに体が変だ暑いも寒いも感じない、いやそうじゃなくて暑くて寒気がして訳が分からないきっとものすごくヤバイ状況なんだろう。
時間も距離も分からないやっと三差路。
「右よ」
ダメだ、奥津姫の声が遠く遠くに聞こえる自分の思考さえ定かでないもう機械の様に進んでいる、多分進んでいる筈。
「バシャバシャ」
どこかで水の音がしている。
(あっ水の中)
気が付けば川の中に入っていた胸の所まで水に沈んでいる、かなりヤバかった意識が戻らなかったら入水自殺になってたかも知れない。
「その心配は無くてよここが除霊の滝、水を見てごらん」
滝壺の水は墨汁の様に黒かった、全部じゃなくて真っ黒い水が透明な水に流れ込んでいる、真っ黒な水は私の体から流れ出していた、人の形に成ったり崩れたりしながら渦に巻かれて渦の中心に吸い込まれていく。
「キメラ肩まで水に浸かって」
だいぶ意識が戻って来た。
「ヤバかった意識失くしてた」
「少しでも水に浸かっていたら大丈夫そこから少しづつ浄化されるから、もちろん全身浸かった方が早いけど」
「あの、この水下流に流れて行って大丈夫なの、川が汚されてしまわないの」
「水の流れをよく見てごらん、渦のあたりと下流に流れている所」
「黒い水は全部渦に流れてる、下流に流れているのはきれいな水」
「そうよ穢れはすべて吸い込まれていく、もし下流にいても吸い込んでしまうから心配はいらないわ」
「良かった、こんな水が下流に流れたら大変な事が起こりそう」
「まだ頭が大変な事になってるわ、滝の下に入って頭から水をかぶって」
「やっぱり、頭が重い」
大きな滝ではないので水量はしれている、水道ホース五本束ねたくらいかな。
頭にバシャバシャ当たるとまたまた黒い水が流れ出す、どれだけ穢れているのやら。
私から流れ出す水がかなり澄んできた。
「少し休憩しましょ、体力回復しなきゃ体が弱ってしまう、弱ったら付け込まれるからね」
「あ、ああ何となく分かる、昔散々鬼にやられたから」
「でもあなたは負けなかった、今生きているのがその証」
「そうなの、負けなかったんだあたし」
「そう、一度岸に上がってご褒美よ」
「ご褒美?」
岸に上がると一本の木が目に入った木はたくさん生えているけど。
その木に一つだけ実が付いていたミカンくらいの小ぶりの実、桃の様に表面が短い毛で覆われていて光の当たり方によって虹色に光って見えた。
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