第13話 ネコバスならぬキツネタクシー?

 途中で電話するより知り合いの喫茶店へ行くことにした、そこまで行けば何とかなる。


 商店街に出るところまで来て信太しのださんが、

「私はここから出られないから後はキツネとキメラに任せるしかないの、喫茶店に入れば何とかなるのね」

「うん大丈夫、お母さんの知り合いだから、帰ってから信太さんに連絡できないの」

「無理ねここには電話なんてないから、喫茶パリだった?そこへ連絡できる方法考えるすぐには出来ないけど、また顔を見せて」

「うんなるべく明日も来るよ」

「これを持って行きなさい、コーヒー豆、挽いているから目が覚めなかったらそのまま口に入れてもらうようにお母さんに言っておくのよ」


 小さなビニール袋に5粒のコーヒー豆が入った袋を渡してくれた。


「あっブラックの代わりね、これが有れば目が覚めるよ、ただの豆じゃないんでしょ」

「そうだけど、他の人が飲んでも大丈夫よ、効果はキメラだけにしか効かないから」

「ここからどうすれば良いの」

「キツネに任せなさい、落ちないようにねしっかり掴まって」


 信太さんがソフトボールを投げるように下から手を振り上げると、キツネはフッと空に浮かんだ、と思ったら直ぐにトンと着地。。。


 一瞬で喫茶パリの前に居た誰かがドアを引いて開けてくれる、背中を押されて中に入るとキツネ君は消えていた。


「おばちゃんまた道に迷っちゃったもう動けない」

 その場に座り込む。


 おばちゃんも慣れたもの慌てず私の腕を掴んで椅子に座らせてくれる。


 水を持ってきてくれて「何か食べる、お腹空いてるんだろ」

 私は両肘で体を支えて「でも直ぐにご飯だから」

「何か食べないと歩けんだろう」

「そうだね、でもお金持って来てないんだ」

「水臭いこと言うんじゃないよ、婆さんから後でたんまり貰うから心配することねえさ」

(お母さんの方が若いんですけど)


「じゃあオムライス、お母さんに電話掛けなきゃ」

「もっと早う電話かけりゃええのに」

「キツネ横丁は電話かからんのよ」

「ありゃまたそこへ行っとたんか、わたしゃ一度も行けんのにさ」


 電話をかける、まだそんなに遅くなってなかったので「どうしたの」と呑気に聞いてくる。


 その時はまだ歩けそうになかったので、

「歩きすぎて疲れちゃった、お父さんパリに寄ってくれないかな」

「パリに居るの、連絡するからそこに居て」


 お父さんはアルバイトが終わって(本職は住職)今頃駅に着いる筈10分もしないで来てくれた、私はオムライスをムシャムシャ食べている最中。


「また道に迷ったのか、腹が減って動けんのか」

「うん、この頃お腹が空いて仕方ないんだ、帰ってからご飯食べられるよ」

「帰ってご飯食べるんか、少なめにしときゃ良かったな」

 おばちゃんが割り込んでくる。


「大丈夫、帰った頃にはお腹空く、オムライスを食べると元気が出るんだ」

「うちのもんやったら何食べても元気出るっちゃ」


 本当に元気が出て歩いて帰れた。


善繡ぜんしゅう無理してないかい、毎日行かなくても良いんだろ」

「大丈夫、そんなに忙しい訳じゃないし、今日はキツネ横丁を歩いてみたかったんだ、それでウロウロしすぎたの」

「でも私達はそこへは行けないんでしょ、そこで動けなくなったらどうするの」

「横丁から出るところまでは信太さんが連れて行ってくれる、今日は一人で歩いてみたんだ」



 夜眠っていると体に重いものが圧し掛かったみたいで動けない、背筋にゾクゾク悪寒が走る。

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