第12話 魂と引き換えに望みを叶えるって。。。

「なりたくない」

「願いが全て叶うとしても」


「あたし何年間も寝たきりだった、やっと起き上がったけど満足に生活できなかった、それが数日前に体がちゃんと動くようになって、あれこれ考える事が出来るようになったの、やっと人並みに生きて行ける様になったところなの、このままで良いの、このままが良いの」

 力を込めて訴える。


「あーなるほど、それで引き込まれたのね赤ん坊みたいに無防備なのよ、本当なら問答無用で取り憑いちゃうんだけどタグだけ付けて様子を見るわ、神頼みすれば何でも叶えてあげる」


「魂と引き換えなんじゃあ?」

「悪魔みたいに言わないでよね、私が入り込んだところでキメラはそのままよ、神の化身なんてあなたさえ気がつかないのよ」

「それでも嫌、このままが良いの」

「分かったわ、面白いものを見つけたから失くさないように事故に遭わないようにしておくね、神頼みするのを待ってるから」




「困ったわ、何かに取り憑かれたかも、何が来てたんだろ、キメラ起きて」

「、、、えっと???」

 目を開くと信太しのださんに上半身を抱えられていた、横に寝た体制で。

「あっ気が付いた、何が有ったの」

「んーちょっと、、、待って」

 私は体を起こす、床に寝そべっていた、カウンターの内側らしい。

「えーとおきつ何とか」

 まだ頭がハッキリしない。


「えっ奥津比古おきつひこ、どうして」

「どうしてってコーヒーを入れろって、怒ってた」

「明日来るって言ってたのに、今日来ちゃったの!油断してたわ、それで」

「コーヒーを入れた、、、その後よくわからないけど奥津比売おきつひめが夢に出てきた」


「声は聞こえたの?」

「うん、奥津比売おきつひめも不思議がってた、、、眠い、、、」

「あーまずいな夢じゃないわきっと、取り憑かれたりしたらどれだけ影響が有るか分からない、寝てはダメよ」

 信太しのださんは私の背中を壁に立て掛けて離れて行った。



(苦っ)「あっ」

「気が付いた、なるべく起きていて今は」


 信太さんに体を支えられコーヒーを口に入れられていた、例のブラック。

 カップを受け取り少しだけすする。


奥津比売おきつひめは何を言ってたの」

「えーと何だったかな、願いを叶えてあげるとか、、、んーもう思い出せない」

「夢だけなら良いけど、体に異常はない?」

「まだ寝ぼけている、立てるかな」

「そろそろ帰らないと心配されるわね」


 カップを信太さんに渡し、両手を着いて起き上がろうとするが力が入らない、

 信太さんが肩を貸してくれてやっと立ち上がれた。


「これじゃあ帰れそうにないわね」

 そう言って私を抱えたままカウンターを出て私をカウンターの席に座らせた。


「まだ眠い?」

 首を振りケータイを取り出す。


「ここじゃ掛からないかもしれないわ」

 案の定圏外になっていた。


「掛からないね」

「んー困ったわね、キツネ!」

 何も居なかったところからモフモフの大きなキツネが現れる、、、結局信太しのださんの使いだったのかな。


「キツネに乗って外まで送らせるから、あ着替えておこうか」

 私はお店のメイド服姿。


「このままでも良い?」

「構わないけど、ちょっと待って制服持って来るわね」


 学校の制服は紙バックにいれて信田さんが持ってくれてる。


 足を広げるとキツネ君はさっともぐって直ぐに私を背中に乗せてもう二回り大きくなった、ポニー程の大きさ。

「両腕で首を抱きかかえて、落ちないようにね」

「うん、これでうちまで帰れないかな」

「無理、キツネ横丁からはキツネも出られない、出口で家に連絡するか商店街に有る喫茶店だけは移動出来るわ」

「パリ?そこならお母さんが迎えに来てくれるよ」

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