第10話 取り憑かれる?

 話し終わると何人かがすすり泣いていた、泣いて欲しくない、それより笑顔で良かったねと行って欲しい。


 HRが終わると大勢集まってきた、私に一番キツく当たっていた、、、誰だっけ?その子が真っ先に、

五來ごらいさんごめんなさい、あなたの事知らないくせにひどい事たくさん言ってきた、反省してる、本当にごめん」

「だよねえ本庄ほんとにきつかったもんね、でも五來さん小学校ほとんど行ってないんだ」

「うん、六年は行ったけど何にも分からなかった」

「だよね、だよね、私学校行ってても分からなかったもの」

「それ早苗がバカなの、二年生になれないかもよ」

「えーやだそんなの、下級生にばかかにされる」

「今は五來さんの話、あんたは向こうへ行った行った」


「私も五來さんのことバカにしてた、ごめんね」

 次々と謝ってくれる。


「あのさあたし先週までは昨日の事は覚えてないから気にしなくて良いよ」

 そう言うと一瞬間が空いた、誰かが話題を変えるように言う。


「本当に別人みたい、こっち側もはやく脱皮すれば良いね」

「あっあたしねこの顔気に入ってるの、右と左でジキルとハイドみたいで」

「確かにそんな感じだけど、でも男の子引いちゃうかも」

「そうよねえ両方左に顔になったら間違いなくモテモテだよ」

「モテなくて良いの、あたしまだ小学低学年なみの精神年齢だから男子とか興味ないの」

「でもさ、なんか急に大っきくなってない、全然前と違うんですけど」

「休んでる間に二センチくらい背が伸びたかな、物の見え方が違うんだ」


 たわいも無い会話が始業ベルが鳴るまで続いた。


 放課後何人かの女の子が寄って来たが、

「ごめん、毎日リハビリしなくちゃいけないんだ」

「えー毎日、大変なんだ」

「うん又寝たきりになりたく無いから今体動かしておかないと」

「そっか頑張ってね」

 あたしのリハビリは信太しのださんのお店、一人で店番出来るようにならないと。

 


 <コーヒーショップ 葛の葉>

 ドアを引くとカランとドアベルが鳴る、中へ入ると信太さんの代わりに幼稚園くらいの小さな女の子が二人がけの席に一人だけで座っていた。


「あ、すいません、えっとお客さんですよね」

「遅い!」

 いきなり怒られた。しかも男の子の声、女の子みたいな男の子?


「あの店長いませんでしたか?」

「見ての通りじゃ、わししかおらんわ」

 男の子じゃなくてまるでお爺さんが喋っているみたい。


「すいません、コーヒーでよろしいですか」

「もちろんじゃ、何時ものやつじゃぞ」

「あのすいません、お名前教えてください、まだ見習いなのでレシピを見ないと作れないから」

「わしの姿を見ればすぐに分かるじゃろ、ヒントは台所の神様じゃ」

「えっ神様なんですか、幼い可愛い女の子にしか見えませんけど」


 神様に近付いちゃいけないと言われているので一歩後ずさる。

 それでも可愛いと言われたのが嬉しいのかにっこり笑顔になった。


「あたしね、奥津比売おきつひめって言うの」

 いきなり少女の声に変わる。


「コラおきつひめ、勝手に名前を言うな」今度は少年の声。


 さすが神様変幻自在、見かけは少女のままだけど。


 名前を聞けたのでカウンターの奥のレシピを確認、(有った、奥津比古命おきつひこのみこと奥津比売命おきつひめのみこと、でもレシピは全然違う)

「あの奥津比売おきつひめさんでいいのかな」

「わしは奥津比古おきつひこじゃ」

「えっと二人いらっしゃると???」

奥津比売おきつひめは眠っておるわしの分だけで良いぞ」

(名前言ってましたけど?まあ言われた通りにしておこう)



 コーヒーを入れて持って来ると、

「そちもそこへ座れ」命令される、まあ可愛いから許そう。


 向かいの椅子に腰掛けた途端動けなくなった、これが金縛り?

 頭背中にズンと重圧がのし掛かる、そして何かがヌルヌルと私の体に入ってきた。。。

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