第7話 私はキメラ、お客さんは。。。
「おかあさん、もう一度お店探しに行ってくる」
「そう、迷子にならないうちに早めに帰ってくるのよ、携帯持っているわね」
日曜日、特にする事もない私は幻の喫茶店を探しに行くことにした、お供はケータイ、これが無いときっと家に帰れない、迎えにも来てもらえない、別名「まい
(パソコンで私の居場所が分かるらしい、居場所も上手く言えない私だから)
今日は学校の帰りにネコちゃんに出会った場所に行く事にする、簡単だったから。
あっ居てくれた、猫ちゃんじゃなくて狐さん(多分)。
わたしが近付くとやっぱりさっさと先を歩いていく。
(狐のお社通ってくれないかな)その後頭部に電波を飛ばす。
(出来るわけがない)
が有りました、小さなお社。小さな狐が二匹対に向き合っている。
(幻かな、お社をきっと再建します、いつになるか分かりませんが待っていて下さい)
狐さんが先に行ってしまわない様さっと手を合わせる。
お店に入って開口一番「き、狐のお社有りました!」
「来てくれたのね良かった、狐のお社見つけたの、すごいわ・・・、私でもずっと昔にしか見た事が無いのに、やっぱり只者ではないわね」
(えっ名前が聞き取れない?)
「えー
自分で名前呼んでおいてアレっと思った、(名前聞いてたっけ?)
「本物はとうの昔に壊されたんだって、私には狐さえ見えないのよ、どうしてなんだろ」
「幻だから、ってこのお店は幻じゃないですよね」
「どうかな?普通の人は来れないから人にとっては幻かも知れないね、、、はい座って座って」
そう言って椅子を引いてくれる。
(あれ?私何しにきたっけ)
席に座って、
「違います!信太さんはここにちゃんと居ます、お店だって壁を通り抜ける事なんて出来ないし、椅子もちゃんと座れる、コーヒーカップだって落としたら割れそうです」
「ごめんね、私の方が良く分かってないの、どうして私がここに居るのか、自分が何者何か、答えはあなたが出して、そのためにあなたが来てくれたんじゃないかなってそう思っているの」
「わたしが、ですか?あっそうだ、この前はコーヒーごちそうさまでした、あれ?」
「どうしたの」
「なんかわたしいっぱい喋ってる」
「そうね、この前と随分違う、それにその顔どうしたの」
わたしは顔を掌でゴシゴシ擦って、
「脱皮、かな?」
「脱皮、ヘビみたいねそういえば大きくなったかな」
「えっまさか、えっと四日前?だったかなそんな、、、」
「そんな、、、」
信田さんは私の言葉を繰り返す。
「かも?」
「かも?」
「背が伸びたかも、何か高い靴を履いてる感じがする」
「やっぱり、うん伸びてる、入って来た時あれって思ったの」
「あの、、、コーヒーかも」
「コーヒー?がどうしたの」
「あの後すっごく寝ちゃって、起きたらお腹ペコペコですっごく食べた」
「そうね食欲が出る効果はあるけど、、、」
「それだけじゃなくて、今思えばあの時まで、んー何て言うか目の前が水の中って言うか、プラスチックのケースの中かな、厚い膜が有ったの、それがぱっと消えたみたいな感じ」
「あーコーヒーって脳を活性化させる効果も有るけど、効いたのかな」
「うん効いた、だから脱皮が始まった、と思う」
「うーんそんな効果が有ったとわ、って昔はコーヒーもスパイスもお薬だったのよ、元気が出るとか寿命が延びるとか頭が良くなるとか魔除けとか、今でも頭が冴えるって言われてるから、でもそこまで効果が有ったなんて初めてよ」
私は息を大きく吸って吐いてから、
「それは信太さんが淹れてくれたから」
「えっ私?」
「そうです、きっとそうです」
「、、、と、とにかく何か飲もう、ブラック?」
「ダメです、寝ちゃうから帰るギリギリに飲みます」
「普通は目が冴えるんだけど、じゃあ薄いのね」
そう言ってコーヒーを淹れに行く。
カウンターの向こうから、
「それからここではあなたの名前はキメラかキマイラどちらか選んで、その顔だから」
「キメラ?キマイラ?、、、えーとキメラで良いです、ぜんしゅうって長くて短い方が良い」
「じゃあキメラ、いいことこれからは決して自分の本当の名前を言ってはダメよ、ここにはいろんなモノ達が来るから、本当の名前を知られると憑りつかれたりしてしまう、あなたの名前はキメラ!」
<ドン>
最後の名前で衝撃を受けた、刻印をされた感じ(私はキメラ)
コーヒーを飲み終えると、
「キメラ、制服を用意したの着てみて」
(そうだった、私はこのお店の手伝いをするんだった)
何の違和感も持たず(今日からお手伝いに来たんだ)って思ってしまった。
今日はお店を探しに来ただけって事はどこかへ消え去っていた。
「こっちへ来て」
奥の部屋へ招かれる。
部屋というより通路かな扉だけの幅で奥にも扉が有る。
信太さんは入って右側の真中辺りにある二つの取っ手を引くと、頭の上から膝上辺りまでの高さの扉が左右に開いた、中には服が吊ってある、一着だけ。
「ここがキメラのロッカー、お店に来たらまずここでこの制服に着替えて、学校の服汚しちゃいけないから」
そう言って取り出した服はとっても可愛い、濃い緑色に胸とエプロンが白くヒラヒラの付いた服(こっちの方が汚しちゃもったいない)。
「ゴシックロリータのメイド服」
「色が違うけどアリスの服みたい、わたしが着るのもったいない」
「そんな事ない、着てごらんなさい、ここの立派な店員になるわ」
「これはヘッドドレス」
そう言って着替えた私の頭に小さなヘアバンド?を付けてくれた。
ロッカーの扉のうらが鏡になっていて<ゴシックロリータ>を着た左右の顔色の違う私が映る、可愛い顔にも見えるし怖い顔にも見える、でも素敵だ、自分じゃないみたい。
「うん、可愛い、ずっとお店に居て欲しいな」
「あーそれは、、、」
「分かってる、来られる時でいいから、初めは一時間でも良いからね」
「あのもう少し大丈夫」
いつの間にか働く事に成っていたが私にとっては当然の事の様に思えた。
「ともかくコーヒーを入れる事を覚えて、接客は自然と出来る様になるから、難しく考える事はないのよ、ただ注文が聞けたらいいの」
接客なんて出来そうにないからそう言われると気が楽だ。
「それからここに来るお客さんは人は滅多に来ないから、と言っても怖そうなモノはキメラが居る時には来ないようにするから、ちょっと人と見てくれが違うけど大丈夫だよね」
「はい?、、、」
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