第7話 それでもこのできたてが
できたてを君へ
僕の作るものはだいたい
ロボットとかそういうものが多かった
だけど最近は毛色がちがう
ある人からはベビーグッズを頼まれたり
ある人からはダンスの衣装を頼まれたり
ある人からは大学の先生を頼まれたり
ある人には恋人を頼んだ
「その冷たい手は人を殺せる。なんなら僕と握っておけ」
「嫌なんじゃないの」
「嫌だけど、他の誰かが握る方がもっと嫌だ」
「なんで?」
「しっと」
「あんたでもそんなこと考えるんだ」
「あたりまえだ」
僕にできたてのこの何かを
全員に平等に返せるほど僕は器用じゃない
できる限り希望に応えて
でも一番は僕をあったかくしてくれる君に
言い訳はよそう
僕の熱は君に全部あげる
僕のことは君にあげる
君がいらないっていうなら誰かを探す
「絶対ダメ!」
「なんで?」
「嫉妬に決まってんでしょ!」
ほんとに可愛い
〇〇〇〇〇〇
あいつは急に変なことをいう
もうなんなの!
時代遅れの手作りチョコは溶けてしまった
私の手の熱で
雪はいつの間にか溶けてしまった
私の手の熱で
こんなに世界が変わっていくのに
それでも雪が降るのは
私に熱があることを教えてくれるため
「君を冷やす雪なんてこの世から消す」
あいつがバカなこと言うから慌てて止めた
熱に浮かされてしまえば
世界征服だってできる
彼にそんな気は微塵もないけど
私は彼とはちがう
彼も私とはちがう
だからこの冷えた手をあたためてくれる
手をつないで
真っ赤になって
幸せで
バカだ
いつかまた辛くなっても
きっと大丈夫
それでもこの冷えた手が 新吉 @bottiti
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