第3話 それでももこもこの手が

 私は猫を飼っている



 私はあまのじゃく


 彼の発明品のせいで、ちょっと前まで本当に生きづらくて。好きなものに熱中しすぎるとすぐ中毒になる、そんな変わった世界だった。好きになりすぎず、嫌いなものをあえてやることで私は抵抗していた。猫を飼っているのは私が犬を好きだから。猫派の人に怒られるかもしれないが犬の方が好きだ。だけど今更この子を手放すことはできない。呼んでも来ないしどんなに冷たくされても、絶対。


 本も好きだ。進化が進んだ今の時代少なくなってしまったが、まだ本が読める。好きなジャンルはファンタジー。これも意外だと言われる。


 ちなみに彼はどっちも派。犬も猫も平等に好きだ。小説は読まない。難しい研究書や論文を時々読むくらい。だけど私が時々書く小説にアドバイスをくれる。


 気づいたら彼ともこもこの猫や犬に囲まれて本を読んでいた。あったかくて幸せで、先程感じていたような辛さや不安がなくて、どこか現実味がなかった。まるで夢みたいだなんて思ったら目が覚めてしまった。


 目が覚めるということはさっきのが夢で私は眠っていたということだ。何の毛だかは知らないがやけにモコモコの掛け物が肩に乗っていた。これのせいか。



「お目覚めかい?」


「ごめん」


「なんで謝るの」


「や、ごめん」


「どうしたのさ、あんまり見ない顔だな」



 のぞきこまれる



「その顔も好きだなあ」


「そうやってすぐ」



 私はあまのじゃく


 好きだけど好きじゃない

 嫌いだけど嫌いじゃない

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