第46話 返礼

 

 正門を出た所で声をかけてきた男の子。


 金色に染められた髪に高めの身長。


 切れ長の目は当たり前であるが変わっていなくて、彼は私を見下ろしていた。


 脳裏を過ぎるのはアミーさんに出会った日。


 スーパーの前にいた彼が、目の前にいる。


 頭の片隅で理解して、私は反射的に笑った。彼はもたれていた学校の塀から離れるとこちらに近づいてくる。


 学生服から見るに近くの工業高校。なんで彼がここにいる?


 分からなくて、気づけば私は目を見開いていたようだ。


 あれからもうすぐ二ヶ月は経つ。何か粗相そそうをしたか。手帳を落とすって言うことはした。絆創膏箱渡しっていう馬鹿なこともした。もしかして足りなかった。やっぱり後から考えたらお節介で腹を立てさせてしまった。


 なんで高校分かるの。彼は私の手帳を拾って名前を知った。同じページに高校名書いてる。馬鹿やった、どうしよう。


 私の脳内で不安と疑問が溢れかえり「ぇっと……」と苦笑しながら首を傾げてしまう。


 それを目の前で止まった彼はどう受け取ったのか。眉を微かに下げてしまった。


「覚えてねぇか」


「ぇ、ぁ、いえ、あの、スーパーの方ですよね、手帳を拾って下さった」


 覚えてます。忘れません。


 私は何回も頷いて男の子を見上げる。彼は顔を明るくして「そうか」と頷き返してくれた。


 なんだろう。大きく表情が変わる訳では無いけれど、分かりやすい人だな。今全力で「安心した」って言われた気分。


 彼はふと私の後ろの方に視線を向けて「ちょっといいか」と歩き始めてしまった。


 え、あ、お……はい。


 私は彼の後ろに自転車を押して着いていく。何処へ行くんでしょうか。


 彼は目的がある歩き方をするから、私は黙って数歩後ろに続いた。


 綺麗に染った金髪だな。と言うか何の用事なんだろう。


 何も喋らないまま辿り着いたのは近くの児童公園。彼はそこに設置されている自販機の前に立っていた。


 私は入口近くに自転車を止めて後を追う。彼は私を見下ろすと、ただ黙って見つめてから小銭を入れていた。


 そのままパックのオレンジジュースのボタンを押して取り出している。


 オレンジジュース好きなんだろうか。てか何で私ここにいるんだろう。


 一瞬アルフヘイムのことが脳内を回り、それを振り払う。


「ん」


「……ん?」


 差し出されたオレンジジュース。


 私は彼の大きな手の中にあるパックを見てから、彼の顔を見上げた。彼は首を傾げて確認してくる。


「嫌いだったか?」


 ……え、っと?


「嫌いではないですが……」


「じゃあ……ん」


 両手の上にオレンジジュースが置かれる。私は暫くそれを見つめて、半笑いになってしまった。


「……あの、どうしてオレンジジュース……奢ってくださるんですか?」


「礼だ。絆創膏の」


 その言葉に目を丸くしてしまう。


 絆創膏の、お礼。


 彼は自分のスクール鞄を開けていた。そこから出てきたのは新品の、あの日私が渡した絆創膏だった。


「絆創膏も同じやつを買ったから返そうと思って、待ち伏せてたんだ」


 彼は絆創膏も乗せてきて、私の両手はオレンジジュースと絆創膏の箱で埋まった。目を瞬かせてしまう。


 お礼、って。そんな、してくれなくても。


 だって貴方は私の手帳を拾ってくれた。それで絆創膏のお返しなんて十分だし、言うなれば元より絆創膏のお礼なんていらなかったんだ。私が安心したいだけの行動だったんだもの。


 だからこれは完全に行き過ぎたお礼で、そんなにしてくれなくていいって、言わなければいけない。


 思うけど、顔を上げて見た彼の表情から私は言えなくなった。


 何処と無く自信がなさそうな目。これで正しかったのか分からないって言う顔。


 態々買ってくれて、学校まで来て、待ってくれて、飲み物まで奢ってくれて。


 あぁ、申し訳ない。どうしよう。でも、謝るのは違う。


 考えた私は、ゆっくり笑って見せた。どうか安心してくださいと伝えたくて。


「ありがとうございます」


 お礼を述べて頭を下げる。すると彼は満足そうに頷いてくれて、私は「あ、ちょっ、と」自分の鞄を急いで開けた。


 絆創膏を仕舞ってから財布を出し、自販機に小銭を入れる。


 彼は目を瞬かせて、私は指をさ迷わせた。


「どれが、お好きですか?」


「……いや、俺は……」


 彼は自分のうなじを摩ってから「これ」とボタンを押してくれた。オレンジジュース。


 私は笑ってしまい、受取口に落ちてきたパックを彼へと渡した。


 受け取ってくれた彼はパックを見つめて聞いてくる。


「なんで奢ってくれたんだ」


 私は自分が貰ったオレンジジュースを両手で握り締め、笑っていた。


「私があの時絆創膏を渡したのは、お礼目的とかではなかったって言うか……その、あの後手帳を拾って下さっただけで十分だったんです。本当に、嬉しかったから……。だからこのジュースも絆創膏も、私はお礼を貰いすぎていると思って、お礼にお礼を返さなきゃ、みたいな……」


 あ、ゴチャゴチャしてきた。


 私は自分の髪を引いて「ごめんなさい、面倒な性格で」と頭を下げる。


 お礼にお礼を返すってどうどう巡りにしかならない気がする。何をしているんだろう。彼は別にそんなこと望んでなかっただろう。


 胃が痛くなってきた。やりすぎた、馬鹿なことしたな自分、おい。


「そっか……ありがとう」


 可笑しそうな声がする。


 苦笑したまま見上げると、彼は仕方なさそうに笑ってくれていた。


 その笑顔に安心する。


 私も肩に無意識に入っていた力を抜いて、自然と笑ってしまった。


 彼はジュースを飲み始めて、私も同じようにストローを挿す。それからベンチに促されたので並んで座り、夕焼け色の中で二人揃ってオレンジジュースを飲んだ。


 変な空間。


 だが別に居心地が悪いという訳では無いので、私は久しぶりに飲むジュースを堪能していた。


 お互いの高校のこと、バイトのことといった他愛もないことを時折話しながら。


「寝不足か?」


「……ちょっと眠れなくて、最近」


 苦笑しながら目の下を触る。彼は「そっか」とだけ呟いて、ストローを口に含んでいた。


 誰かと話していても、ふとした時にアルフヘイムのことが浮かんでしまう。これはもう、職業病的なあれだろうか。


 ベレットさんの姿が浮かぶ。それを目を瞑ってやり過ごすと静かな声が聞こえた。


「本当は絆創膏だけ返すつもりだった。けど、なんか……足りない気がしたんだ」


「十分過ぎましたよ。私は貰いすぎてます」


 肩を竦めて笑ってしまう。オレンジジュースを振ってから畳んでいると、彼は言葉を選ぶように喋っていた。


「あげすぎたんだったら……その分、また、返してもらってもいいか?」


「はい。あ、一パックでは足りませんでしたか。もしくは別の飲み物飲みますか」


 飲み切ったパックを手持ち無沙汰に振っていた男の子。私は財布を掴んで笑うが、彼は「違う違う」と苦笑していた。


 え、違いましたか。パック一つでは男の子は足りないと思ったのですが。


 あ、いや、喉が渇いていなかったのか。ごめんなさい気が効かず。


 彼は微笑んだまま優しく言ってくれた。


「時々でいい。こうしてまた、話したい」


 私は首を傾けて、笑顔を固めてしまった。話したい……?


 私はそこまで話が得意な訳では無いぞ。と言うか、学校も何もかも違う私と話したい。何故。


 首を傾げて黙っていると、彼はうつむいていた。


「落ち着いたんだ、凩と話してたら……何回かお前にお礼しに行こうって決めて、学校行こうとしたら絡まれて。喧嘩して、ささくれだったから止めて……それで、今日やっと会えて、話したら……落ち着いた」


 自分の拳を彼は撫でる。


 話していて、彼は特に喧嘩が好きだとか、そういった人ではないと何となく伝わってきた。


 私と話して落ち着くだなんて、また変な人だとも思ってしまって。


 私は笑うんだ。


「……私、話すの得意ではないのですが、いいんですか?」


「あぁ、いいよ。俺も得意じゃないから」


 どういうこっちゃ。


 私は笑ってしまい、彼はゴミ箱にパックを捨てていた。私の分まで。申し訳ない。


 会釈して「すみません」と言うと、彼は気にするなのジェスチャーをしてくれた。


「悪かったな、今日は急に」


「いいえ、気になさらないでください。ありがとうございました」


「こっちこそ」


 彼は笑って肩から力を抜いてくれたようだった。


「時間が出来たら、また学校前で待ち伏せる」


「待ち伏せるんですね」


「あぁ、迷惑はかけないようにする」


「迷惑なんてないですよ」


「……凩はそうだろうけど、な」


 彼は金髪を触って肩を竦めている。


 彼の見た目は、一般的に言えば品行方正と思われるようなものでは無いだろう。


 それを心配しているのだろうか。


 簡単に「気にしなくていい」なんて言えない。人は見た目が八割だの六割だの言われるのだもの。


 彼は私が口を開く前に顔を上げて、笑ってくれた。


「俺は、時沼ときぬま相良さがら、よろしく」


 そう言って手を差し出してくれる。私は笑い返して、彼と軽く握手を交わした。


こがらし氷雨ひさめです。よろしくお願いします」


 時沼相良さん。


 彼は穏やかに笑ってくれて、そのまま私達はお互いの帰路についた。


 待ち伏せなんてする前に連絡先を交換した方が早かったのではないかと気づいたが、残念ながら既に家に着いていた為、次会えた時にでも提案すればいいかと思っていた。


 * * *


 夜アルフヘイムに降りる時、空の波打つ箇所が三ヶ所に増えていた。


 結目さんに、闇雲君、私が吐き出された場所がそれぞれ波打ち、闇雲君は空中でルタさんと同化して降りていく。


 私の背中ではひぃちゃんが翼を広げてくれて、結目さんは風に揺られるように降下して行った。


 谷底に向かって降りれば、私達を見上げている楠さんと細流さんが確認出来る。


 底はいつも通り光が弱くて何となく肌寒く感じた。


 光がどんどん弱くなる。


 それは同時に、私の中から昼間の明るい光景が抜け出ていってしまうようだ。


 私は目を伏せて、冷たい地面に足を着いた。


「ありがとう、ひぃちゃん」


「いいえ、氷雨さん」


 お姉さんの首を撫でて額を合わせる。それから楠さんと細流さんを見て私は笑った。


「こんばんは、こんにちは、楠さん、細流さん」


「こんばんは、こんにちは、凩さん」


「こんばんは、こんにちは、氷雨」


 何となく定着しつつある挨拶に二人は無表情に返してくれて、安心する。


 私は微笑んだまま会釈して、横に足を着いた闇雲君と結目さんを見た。


「こんばんは、こんにちは、闇雲君、ルタさん、結目さん」


「ぇ、ぁ……こん、ばんは……こんにちは、凩さん」


「こんばんは……こんにちは?」


「こんばんは、こんにちは、凩ちゃん」


 首を傾げながらも挨拶してくれた闇雲君と、同化を解いたルタさん。結目さんはどこか眠たそうに挨拶をくれて、りず君が気にかけていた。


「眠たそうだな、大丈夫か?」


「大丈夫だよ、昨日ちょっと力使い過ぎただけ。心配とかいいから茶色いの」


「なんだよその言い方!」


 頬を膨らませてしまったりず君を撫でて苦笑する。結目さんは少し顔色が良くなさそうだ。


 昨日の彼の震えていた指先を思い出す。


 心獣系の私達が力を使い過ぎれば体力を消耗するのと同じように、体感系の方もそうなのだろう。


 不意に、私の肩から跳んだらず君が結目さんの肩付近にしがみつき、彼を驚かせていた。


 私も驚くがな、らず君。


「え、何してんの、落ちるよ」


 必死にしがみついていたらず君を自分の肩に誘導してくれた結目さん。


 それに安心して「すみません」と微笑むと、らず君は淡くも光り始めていた。


 その光を受けて結目さんの目が細くなる。


「……あったか」


 そう呟いた彼は深い息を吐いて、それでもらず君を投げ飛ばしたりしなかった。だから私もそのままにさせてもらう。


 りず君とひぃちゃんも、安心したように息をついたのが聞こえましたね。


「凩さんの心獣……三体もいるんですか?」


 ふと闇雲君に聞かれて、見ると不思議そうにフードを引いている彼と体を傾けるルタさんがいた。


 そりゃそうだよな。普通は一体だもの。


 私は苦笑して頷いておいた。


「ドラゴンのひぃちゃんと、茶色い方がりず君、硝子の彼はらず君。それぞれ、酸性液と変形と能力補助の力を持ってるんです」


「よろしくお願いします」


「よろしくなー」


「ぁ、よろしく……一体に一つの能力なんですね」


「はい」


 闇雲君とルタさんに笑い返し、詳しく聞かないでくれたことに息をつく。


 何で三体に分けられてるのか聞かれて「硝子のハートだからです」なんて答えたくないし、知りたくもないことだろう。


 闇雲君はルタさんの顎のあたりを撫でて、細流さんが聞いていた。


「自己紹介、して、ない、な?」


「……そう、ですね……改めまして、や、闇雲やみくもいのりです。中学三年で、こっちはルタ、よろしくお願いします」


「俺は、細流せせらぎそよぎ、大学二回生、よろしく」


くすのき紫翠しすいよ、高二、よろしく」


 握手してる細流さんと闇雲君に、軽く自己紹介していた楠さん。闇雲君はぎこちない動きながらも会釈して、結目さんを見上げていた。


 結目さんは目を閉じて完全停止。らず君が頑張って光っている状態だ。


 ……本当にお疲れなんだろうな。


 若干心配になるが、彼が心配されることなんて望んでいないと重々承知している為、何も言わないでおいた。


「……そいつは知ってる。結目むすびめとばり。頭おかしいヤンキーだよ」


「誰も頭おかしくねーしヤンキーじゃねーよバーカ」


 その言葉と同時に、ぽいっと言う効果音がつきそうな勢いで投げられたらず君を受け止める。


 自分がしたいことが出来て大満足といった顔をしているらず君だが、結目さんにいつもの喧嘩腰というか、なんと言うかが戻ったのは良いことなのか。複雑なところだ。


 私は、自分の頭上を飛び交う言葉を聞きつつ、苦笑するしか出来ないのだ。


「普通に考えて、人の学校帰りを校門前で待ち伏せる奴にまともな奴なんていねぇだろ」


「話をする為だって言ったじゃん。別に誘拐も恐喝もしてないし」


 あ、何だろう。昼間私も同じようなこと経験した気がする。


 りず君が肩で「デジャヴ」と呟き、私は肩を竦めてしまった。


 結目さん、どうして闇雲君の学校知ってたんだろう。


「しなくても、急にタガトフルムで戦士と会ったら驚くだろ!?」


「雛鳥君はビビりだねー」


「ビビり言うな! つか、どうやって俺の学校突き止めたんだよ!」


「えー知らないのー? 最近のネット社会ってとっても便利で怖いんだよー」


 そう笑う結目さんの声は闇雲君を馬鹿にする色が含まれている。


 私の疑問を口にしてくれた闇雲君は、フードの端を力一杯引きながら「俺SNSなんてしてねぇよ!」と訴えていた。


 ネット社会。私は楠さんと細流さんと顔を見合わせて、二人は同時に肩を竦めていた。


「雛鳥君はしてなくても、親鳥がしてたら意味ないよねー」


「……まさか」


「偏差値激高の大学理工学部教授のお父さんと、都内有名病院外科医のお母さんと、中高一貫進学校の生徒会役員のお兄さんと、そこの中等部の雛鳥君」


「わーわー!! 馬鹿!! 馬鹿! なんでそんなに知ってんだよ気持ち悪いな止めろ!!」


 物凄い高スペックな家族構成を耳にして少なからずも驚いてしまう。叫ぶ闇雲君を見ても、結目さんの口角は変わることなく上がっていた。


「お兄さんに言っとけよ」


 結目さんは平坦に言っている。


 あぁ……悪い笑顔だな。


「写真とか文章には気をつけろってね」


 顔を覆ってしまった闇雲君。彼の肩でルタさんは「鳴介めいすけか……」と呟いて、闇雲君は震えていた。


「ぁんの……馬鹿兄貴ッ」


 お兄さんがいるらしいと知り苦笑する。どこの家でも、お兄さんっていうのは微妙な存在なのかな。


 と言うよりも、結目さんの情報収集能力がえげつない。


 それを実感していると、楠さんがため息をついていた。


「エゴと情緒不安定君は二人で言い合いをしてちょうだい。凩さん、脳筋、次に行くシュスを決めるわよ」


 彼女はそう言って、私はぎこちなく笑ってしまう。


 エゴが結目さんで、脳筋が細流さんのこと。……つまり闇雲君の渾名あだなは情緒不安定君なのか。波乱の予感しかない。


 そんな私の不安が数秒で当たった。


「仕切るなよ毒吐きちゃん」


「え、待ってよ、情緒不安定って……」


「祈のことだよね、きっと」


「意外に誰かいるのかしら?」


「んな!?」


 闇雲君が異議申し立てをして、ルタさんがため息をついてる。


 私は眉を下げて笑い、楠さんは闇雲君の声を右から左へ聞き流しているようだった。強い方だ。


「俺は、情緒不安定なんかじゃねぇよ!!」


「不安定でしょ」


 今度は闇雲君が楠さんに勢いよく「違う」と言い始めてしまい、私は肩を竦めてしまった。


 ルタさんもやれやれと言わんばかりに首を横に振って、細流さんは、闇雲君と楠さんをゆったりと止めていた。


「凩ちゃん、チートメモかーして」


「……はい」


 会話から外れた結目さんは満面の笑顔で私に手を差し出し、私はその上にメモ帳を乗せる。


 楽しそうに笑う結目さんは、一体何を考えているのか。やっぱり今日も読み取れない為、私はひぃちゃんの頭を黙って撫でるのだ。


「止めろよ、情緒不安定って!」


「じゃあナーバス君ね」


「おぉ、ナーバス、か」


「や、め、ろッ」


「あ、凩ちゃん、次はヨーウィー・シュス・ツヴァイに行こー」


「ぇ、は、はい。あ、楠さん、細流さん、闇雲君……」


 わちゃわちゃしながらも話が着いた私達は、今日も空を飛んで移動する。飛行出来るのが三人になった為、細流さんは闇雲君の両足を掴んでの移動に変更になった。私は楠さんを横抱きです。


「飛べる、か? 祈」


「……いけます」


 少し闇雲君の飛行が安定しなかったのは不安だったが、細流さんの倍増化を受けて何とか保ってくれたらしい。結目さんは先頭を一人飛んでるし。


 私は谷底に消えた祭壇を少しだけ振り返る。


 次の生贄を探しに行こう。悪を見つけて祀ってみよう。


 自分の中から何かが欠けていく気がして、それを無視して、私は前を向いた。

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