祈り
私が転生した先は私の予想とは全く違った世界だった。
予想通りなら、私の目の前には草原か、何の舗装もされていないデコボコな土の道か、若しくはスライムやオークなどのモンスターとか、そんなものだっただろう。
ところが、今、私の目の前に広がるのは真っ暗な夜の下、星よりも月よりも強く輝く都会のビル。と言っても、形が奇妙にも、直方体の様な角のある形のものもあるのだが、円柱形、ドーム型、ボールペンの芯が上を向いた様な形等、様々で、最後に例として挙げたビルに関しては芯の部分から光の柱が永遠と、天に向かって延びていた。
「こんなメタリックな世界、プログラミングオタクのあいつなら喜ぶんじゃないかな……」
笑いながら何気なく呟いた自分の言葉に、思いがけず心を貫かれる。
今朝私が「LINO」で話していたのはそいつで、幼馴染故に、「ずっと親友だよ」とかって言っている同性の友達よりも心の裏表が少なく、そんな表面だけの「親友」なんかより、もっとずっと仲が良い。
今朝の「LINO」でだって私の体調の悪さを笑いながら、裏でめちゃくちゃ心配してくれているのを私は何気なく感じていた。
「あいつ……今頃どうしてんだろ……私と同じ目に遭ってなきゃいいけど――」
「――残念ながら、那美様、あなたが心配に思っている『あいつ』は、無事に別の神によって同じ目にあっているそうです。」
無意識にも私の指は神に祈る様に胸元で組んでいた。
って、無意識に指を組んでいた事より、
「嘘でしょ!?」
私は驚きで思わず指を解いて倒れた。
倒れた場所は、人工物だらけのこの世界の中で自然が僅かに残った児童公園だった。
私はそこの脚に少し苔の生えたプラスチック製の茶色いベンチに仰向けになった。
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