荒城
言い伝えがある。
「荒城に決して近づくな」
これを守らない者はいない。
一度、城の主の怒りに触れた者が居たからだ。
その者は今でも城の前で生きたまま
――
――――
「ご主人様ぁ、城の前のアレどうしてますかねー」
「考えたくも無いんだが」
「そうですよねーあんな最低なのはずっと苦しめばいいんです」
「ああ、アレがお前にした所業を踏まえればアレでもヌルい気もするがな」
「アレが来た時のご主人様はほんとに怖かったですからねえ」
「初めてだったぞ。あんなに『怒り』に覚えたのは」
彼が初めて本気で怒った相手、それは彼女の親を名乗る男だった。紋章術が不発に終わったせいでその男には呪いがかかったのだという。その男は少女の所在を探り、何とかこの城に辿り着いた。
のが、運の尽きだった。
『ここに何の用だ』
『ひ、人を探してて』
『……それはこの少女か』
彼の後ろにはあの「少女」
『そ、そいつさえ殺せば……!』
男は懐からナイフを出し少女に切りかかる。が、
『ばっかじゃないの? 何年も経ってるのに』
「少女」は闇に消え代わりに大鎌を持った少女が現れる。
『お、お前は……!』
『ふん、所詮はこんな奴だったか。温情はナシだ、スーア、鎌を』
『はーい』
『お前は一体なん……』
『答えてやる義理などない! 貴様には死すら生ぬるい! 永遠に苦しみ、そして見せしめとなるがいい!』
『う、うわ、うわあああああ!』
――ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
男の断末魔は今でも聞こえる。生と死を繰り返し、無限の苦痛を味わう地獄すら生ぬるいとも思える地獄がこの世にあるという事を証明し続けている。
もちろん、この断末魔は城の中には聞こえない。
彼曰く、何かの
「ところでスーア、大鎌を返してくれ」
「えー、これは私のだもん」
「呼び出した時に一緒に入れたとは言え私の物なんだぞ……」
「ご主人様の鎌に乗ってる時が一番しっくりくるんですー」
「はぁ、まあいい。食事にしよう」
「わーい!」
「なんだか本当に幼くなったなぁ、スーア」
「……こちらの方がよろしいですか?」
彼女はいきなり「二五歳」になる。
「いいや、さっきの方が良い。どうせならな」
「むぅ、あのまま私が老人になってたらどうするつもりだったの」
「それならそれでいい。ただ、選べるのなら無邪気に勉強していた時のスーアがいいんだ」
「ふふ、ご主人様ならそう言うと思ってたよー」
歩を進めていく内、彼は不意に言う。
「なぁスーア。ご主人様呼ばわりは止めろ」
「えー何で?」
「……名前で呼んでくれ。これから永い仲になるんだ」
「それもそうだね。これからもよろしく、ナイト」
八重歯の従者は無邪気に笑う。
彼らの永くを共にする。それは決して邪魔されない時間。
永遠が有るとすればここだろう。
闇の中、静かにそれは過ぎる。
――
闇静 物書未満 @age890
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます