2018年

300字ss参加作

圧倒的(第四十回 お題「人形」)

 「飾られなくなった雛人形を集めて飾る企画」が地元でも開かれたので観に行ってみた。

 全国ニュースで流れるような規模ではないが、市役所の天井まで届く雛壇の上に綺麗に人形たちが並べられた景色は、圧倒的、の一言だった。

 古めかしいものから新しいものまで雑多で、顔も衣装もてんでバラバラなのがかえって面白い。雛壇の前をうろうろしながら、飽きるまで眺め回した。

 さて帰ろうかと雛壇に背を向けた。

 帰れない。

 足が動かない。

 背中にずっしりと重い。

 振り返ると、人形たちの視線が一斉にこちらを向いたように見えた。

 これだけの数が集まると、帰らないでくれと訴えかけてくる無言の懇願も圧倒的だった。

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