2017年

フリーワンライ参加作

罪なヤツ(第125回 使用お題「梵天はお楽しみ」「膝枕の特権」)

 耳かきの後ろの梵天、あれが耳に入ってくる。

 こしょこしょと耳穴に当たる梵天の感触が、いつものことだがほわほわと気持ちよくて、今日は閉じないでおこうと思っていたのにやっぱり目をつむってしまった。

 反対側の耳と頬には、むっちり柔らかくて温かい感触。すりすりと頭を動かすと、上から「くすぐったい」と笑う声が降ってくる。

 膝枕で耳かき、気持ちいいものがいっぺんに両方味わえるなんて、ほんとに幸せだ。

 耳に激痛が走った。

 しまった、またやってしまった。

 マイクロファイバー素材の梵天が五感全部に幻覚を引き起こす、この超ハイテク耳かきのおかげで耳に怪我するのは、これで何回目だろうか。

 耳鼻科に電話をかけながら、また先生に怒られるんだろうなと溜息をつく。

 でも、耳かきを変えるつもりは、もちろんない。

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